レディ・キラーズ
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:トム・ハンクス/イルマ・P・ホール
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【数々のトラブルに崩れ去る完全犯罪、その顛末】
自らを「教授」と名乗る天才犯罪者。川に浮かぶカジノ船から売上げを頂戴するため、目をつけたのは年老いた未亡人マンソンがひとりで暮らす家。仲間を集め、古楽器の演奏団を装い、家の地下室から船の近くまで抜け穴を掘ろうというのだ。ところが、猜疑心の強いマンソン夫人、その飼い猫、身勝手な仲間たちなど、相次ぐトラブルのため完全犯罪は崩壊。遂には、タブーとしていた殺人にまで手を染めようとするのだが……。
(2004年/アメリカ)
【しっくりとまとまり切らなかった小品】
舞台となる街も、描かれる犯罪も小粒。小粒は小粒でいい、映画としても小品できっちりとまとまってくれるなら、と思うのだが「あー、まーそんなもんかー」くらいの中途半端なところで落ち着いてしまっている。
ふだんフルマラソンを走っているトム・ハンクスが、スカッシュ選手のコーエン兄弟とハーフマラソンを走りました、みたいな作品だ。よーわからんが。
そもそも「金庫破りの計画が、ひとりの老婦人の存在によって破綻していく」というストーリー紹介に納得がいかない。予測不能の行動に出るカジノの支配人と彼への対処のまずさ、勝手にオンナを連れてくる仲間、すべてを見透かしていそうなネコなど、モロモロあっての計画破綻であって、すべてをマンソン夫人に押し付けるわけにはいかない。
その婦人にしても、もともと彼女の家を選んだ時点で計画の障害になりうることは予測できたはずで、それ以外のアクシデントについても、教授の場当たり的な対応を見ていると、本当に天才的犯罪者がふとしたアクシデントで道を踏み外していく様子を見せたいのか、それとも実は“自称天才”というだけの出来損ないの犯罪者だったと落としたいのか、曖昧さが中途半端さにつながっている。
その破綻の顛末やオチも、ブラックでほんの少しスラップスティックではあるのだけれど、あまりオシャレではない。笑いと犯罪の映画って、絶対に「オシャレ」がなくちゃいけないと思うのだが。
また、個性豊かな一味のメンバーについて、はたまた老婦人や仕事に身の入らない保安官など、それぞれのキャラクターや設定を生かそうとはするのだけれど、成功しているとは言いがたい。確かに、計画の破綻につながる性質を潜ませたキャラクターたちではあるのだが、各人にまつわるエピソードを、もう1つずつ挿入しても良かったのではないだろうか。
セピア調に統一された画面や、いまにも川が氾濫して流されそうな町のロケーションなど、舞台設定と堅実な画面構成にあわせて、筋立てを少し練り直し、カチっとした構成に仕立て直すべき。いっそジョージ・クルーニーあたりでもうちょっと派手な純ハリウッド調にして時間も延ばすか、あるいは宣伝通りにもっと老婦人の存在がクローズアップされていれば印象も変わってくるだろう。
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