« 戦場のピアニスト | トップページ | イン・アメリカ/三つの小さな願いごと »

2004/10/03

リベリオン

監督:カート・ウィマー
出演: クリスチャン・ベイル/エミリー・ワトソン
30点満点中16点=監4/話3/出3/芸3/技3

【感情を持つことが禁じられた未来社会に、反逆者誕生】
 悲劇の原因は、感情にあり。市民に喜怒哀楽を禁じ、感情を抑える新薬プロジウムの摂取を義務づける、この社会。違反者を取り締まるのはクラリックと呼ばれる特務機関、その武器は、銃と格闘とを融合させた新しい武術、ガン=カタだ。だがクラリックのひとりプレストンは、ふとしたことからプロジウムなしの生活を送ることになる。やがて芽生え始める、優しさと悲しみ。追われる立場となったプレストンは、どう生きるのか?
(2002年/アメリカ)

【スタイリッシュだが掘り下げの足りない“惜しい”映画】
 一部でカルトな人気、というのはよくわかる。12chの深夜のアニメ的というか、わかりやすくスタイリッシュだ。

 ただ、このクラスの映画でありがちな“どっちつかず感”が欠点として表出してしまっている。本来は、SF映画としてのメッセージ性・神秘性と、アクション映画としてのエンターテインメント性とを共存させたかったのだろうが、そのどちらもが中途半端なのだ。予算不足のためか、あるいは脚本や製作に関わる全般を練り込むための時間と力量が不足していたためか。

 たとえば感情を持ち得ないことの悲劇や、主人公が人として目覚めていく過程などは、より情感を込めて描けた(描きたかった)はず。禁じられた文学や処刑されそうな子犬、死んだ妻や無表情な子どもなど、感情と関わるアイテムやシチュエーションの種は用意されているのだが、アッサリとしてあまり掘り下げられない。どこかのシーン、何かのエピソードを、もう少し時間をかけて展開すればよかったのだが、スタイリッシュな描写が先行して、思わせぶり感が足りないのだ。
 かといって、そのスタイリッシュさも、硬質で無機質な映像、ブルーやグレイが基調となる美術、先端科学と廃墟との対比など、昔ながらの近未来SF的画面作りに頼っている印象がある。

 いっぽう、アクション部分のキモであるところのガン=カタも、どこまで強く、どこまで鋭いのかが完全には伝わってこない。確かにスピーディではあるが、それを味わえるシーンは2つ3つに限られている。常人には不可能な技、感情を廃することで生まれる動きなどを、もっとクドく、もっとサービスしてくれてもよかっただろう。銃とガン=カタ以外のギミックも希薄であるなど、この手の映画に説得力を与え、かつ“イキ”に見せるスパイスも足りない。

 全体として、思わせぶり感がたっぷりの『ガタカ』(アンドリュー・ニコル監督)や『未来世紀ブラジル』(テリー・ギリアム)と、エンターテインメント性を前面に出した『マイノリティ・リポート』(スティーブン・スピルバーグ監督)や『トータル・リコール』(ポール・ヴァーホーベン監督)をミクスして割り損なった感じ。ミクスして割ることにこだわらず、感情を持つことがどれだけ人として豊かでいられるかをアピールする部分をより丹念に描くか、アクション部分に予算も労力もシーンも集中させるか、どちらかに徹すれば、B級は脱しないとしても、ストーリー的にも映画としても飛躍的に面白くできただろうと感じる。
 退屈せずに観られるし、部分部分に面白さもある。が、1本の映画としての完成度を認めるには、練り込みが足りない。悪くはないが、惜しい、というイメージだ。

 後で知ったのだが、この監督、『リクルート』(ロジャー・ドナルドソン監督)の脚本家。そっちも“惜しい”映画。とすると、このあたりが限界なのかも知れない。

|

« 戦場のピアニスト | トップページ | イン・アメリカ/三つの小さな願いごと »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: リベリオン:

» リベリオン 反逆者(Equilibrium) [Subterranean サブタレイニアン]
監督 カート・ウィマー 主演 クリスチャン・ベイル 2002年 アメリカ映画 106分 アクション 採点★★★★ 『ブレイド3』でも書いたのだが、映画を観る目的は様々だ。愛と感動の物語を観たければ、この映画はお勧めできない。複雑に展開するストーリーや衝撃の結末を期待する..... [続きを読む]

受信: 2006/02/21 04:27

« 戦場のピアニスト | トップページ | イン・アメリカ/三つの小さな願いごと »