ベッカムに恋して
監督:グリンダ・チャーダ
出演:パーミンダ・ナーグラ/キーラ・ナイトレイ
30点満点中12点=監3/話2/出3/芸2/技2
【規律の中に生きる少女の夢は、サッカーだった】
インド系イギリス人の女の子ジェスは、ベッカムとともにイングランドのサッカー代表として活躍することを夢見ている。ところが女子チームに参加していることがバレて、父親はカンカン、姉の結婚話も破談しそうになる。おまけにチームで2トップを組むジュールズとはコーチをめぐる三角関係で険悪な仲に。やむなく夢を諦めて、おしとやかに暮らそうとするジェスだったが、チームにとっての重要な一戦が間近に迫っていた。
(2002年/イギリス・アメリカ・ドイツ)
【空気感はいいが、ストーリーを語り切れていない】
全体を流れる雰囲気や空気感は好きだ。
映画を構成する要素の中でも、この空気感(文字通りの空気感)というのは、かなり重要。ハリウッドで撮ればヌケがよくなるし、ニューヨークなら少し暗く、日本だとスミがかかって見通しが悪くなり、で、イングランドだと湿り気が出る。空が、決して大陸とは地続きじゃないんだよな、という色になる。
サッカーグラウンドの芝の緑、その上に広がる欧州的な見晴らしの良い空。そんな風景をバックに、ジェスやジュールズが快活に跳ねる。いっぽうで、規律や伝統に厳しく「男性には男らしさ、女性には女らしさ」を求めるインド系タウンや、父母の仲に不安を抱えるジュールズ家に覆い被さるのは、やや重めの空気。この映画のテーマである“閉塞から自由への脱出”を、こうして空気感の違いで描き出している。
冒頭、合成を上手に使って作り出した、ジェスがイングランド代表として活躍するシーンもいい。いきなり「おっ」と思わせてお話をスタートさせるあたり、なかなかのセンスだ。インド人社会の異質さ・ユニークさを抑制しつつ描き出しているのもいい。
が、ストーリーには、いろいろと疑問も残る。ジェスとジュールズの三角関係が結局どうなったのかは語られず終いだし、娘がサッカーをやることに猛反対していた父親の心変わりに(若い頃のクリケット話はあるものの)説得力がないというのも大きな欠点だ。
また、ジェスとジュールズが決してサッカー上手に見えないのも、かなりのマイナスポイント。細かなカット割りやスピード感を出すフレーミングなどで頑張ってはいるのだが、単にシュートを決めたりドリブルで抜いたりして喜んでいるカットだけでなく、ここでも「おっ」と思わせるテクニックをジェスとジュールズに示して欲しかったところだ。
画面やストーリーにそぐわない音楽にも抵抗感がある。現代の若者っぽさを出そうという意図があったのかも知れないが、パンクの国とは思えぬセンスの悪さに興醒めをもよおす。
雰囲気や、いくつかの場面に「!」を感じつつ、ストーリーのまとまりや全体の完成度を詰め切れなかった作品。
もしくは、あ、このコってアミダラの影武者のコなの? 道理でカワイイわけだ、とキーラ・ナイトレイのボディラインに感心する映画。かも。
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