WATARIDORI
監督:ジャック・クルーゾ/ミッシェル・デバ/ジャック・ペラン
出演:鳥さんたち
30点満点中17点=監3/話3/出3/芸3/技5
【渡り鳥たちの生態を丹念に追ったドキュメンタリー】
世界各地に棲息し、季節ごとに想像を超える距離を飛んで楽天地を目指す渡り鳥たち。その姿を追ったドキュメンタリー作品。北極から南極、米大陸、ヨーロッパ、アジアまで、カメラは地球全土をカバーして100種を超える鳥たちの生態を生々しく捉える。鳥の隊列とともに軽飛行機で飛び、切り立つ崖に作られた営巣地にも接近するなど、ダイナミックな映像が特徴。40か国を訪れた撮影は、期間3年、制作費20億円に及んだ。
(2001年/フランス)
【鳥たちのダイナミックな姿は、生命そのもの】
美しい映像、演出(演技指導)したかのようなダイナミックな鳥たちの動き、あそこまで近づいたことによる臨場感、そして何よりも、鳥たちがただの「駒」に堕すことなく「この地球上で生きる命」として扱われていることに感心する。
単なる記録ではなく、また「これだけの鳥さんたちを苦労しながら追っかけましたよー」といった自己満足に終わることもない。“ワタル”という行為の厳しさや意味、その向こうに待っているものを拾い上げているのがエライ。
映画の本質が“観る・観せる”ことにあり、ドキュメンタリーの本質が“伝える・学ぶ”ことにあるとすれば、その中間でうまくバランスを取った作品に仕上がっているといえる。
欠点は、全編を通して散文的になってしまっていることか。そりゃまぁストーリー映画ではないのだから仕方ないともいえるが、これ以上冗長になると……という危ういラインでまとまっているため、ともすれば退屈になりがちだ。
とはいえ「手の届く距離」「まさにそこに在るもの」という雰囲気を、飛ぶ鳥という難しい題材でここまで描き出したのだから、たいしたもの。ストーリー性を求めるなら、親を亡くした鳥たちに飛ぶこと・渡ることを教える劇映画『グース』(キャロル・バラード監督)を観ればいい。あくまで生命を描いたドキュメンタリーとして、十分に魅力的な作品である。
あと、参考までに……
アトランティス
監督:リュック・ベッソン
出演:魚さんたち
大画面向きの作品。というか『WATARIDORI』が“観せる+伝える”作品であるのに対して、こちらは“流す”といった感じ。海のプロモーションビデオ、とでもいおうか。
鳥をあくまでも生き物として捉える『WATARIDORI』とは異なり、ベッソンは魚やイルカたちを(エリック・セラの音楽と同列に)「画面の構成要素」として考えている。
同じフランス産、また恐らくはショップなどで同じコーナーに並ぶ2本の作品。だが、これほどまでベクトルが異なるのはオドロキだ。
ベッソンの“意図”がベースにある海中模様であるわけだが、キレイにまとめようとするあまり(その割に、フィルムの質感のせいか、あまりビューティホー感はないのだけれど)、ベッソンの魅力でもあるはずの「ある種の破綻」が薄れている。
そんなわけで、暗めのカフェバー(死語?)あたりの大画面プロジェクターで“流す”ことで、それなりに店の雰囲気を演出し、「へぇ、ベッソンってこんなのも撮るんだ」と思わせるための作品。
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