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2004/10/17

ソラリス

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー/ナターシャ・マケルホーン/ジェレミー・デイヴィス
30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3

【通信を断った宇宙ステーションで、何が起こったのか】
 地球から遠く離れた惑星ソラリス。この未開の星を探査するために建造された宇宙ステーションで、何かが起こったのか、地球との交信が不通となる。搭乗員である友人の安否を気遣い心理学者のクリスはステーションへと赴くが、生存者は2名のみ、しかも様子がおかしい。やがて、次々と不思議な現象が発生する。SF映画の傑作とされる、スタニスワフ・レム原作&アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』のリメイク。
(2002年/アメリカ)

【立ち位置が曖昧で、どうにも落ち着かない内容】
 実をいうと「この人、オレには合わないや」と『ノスタルジア』を観て感じたため、タルコフスキー版は観ていない。
 それをいうなら、ソダーバーグも“合わない”監督。せっかくの題材とキャストをそろえながら、さしてスリリングでもなく、何となく自己満足気味というか、細部まで追い込み切れなかった『オーシャンズ11』を観て失望したのだから。
 で、今回も然り。塩と砂糖のバランスが悪いというか、ラークだと思って吸ったらマルボロだったというか、文春文庫で読む知名度の低い海外作家の冒険小説を読んだら案の定イマイチだったときの気分というか……、自分の中の棚の、どこにしまっておくべきか迷うノリの映画だ。

 緊迫感や寂寥感はそれなりにあるし、無駄な要素を省いて、思い出というものの意味、人と人との精神的・肉体的な関わりが持つ意味といったテーマを丹念に描こうとする姿勢も感じられて、悪い映画ではないのだろうという気はする。
 が、どうにも首筋がムズがゆくなる。宇宙ステーション内のセットくさい造形や、登場人物が限られることによって、クローズドな雰囲気が作られている。思い出や人との関わりといったパーソナルな問題をテーマとしているのだから、その手法と雰囲気を是認すべきなのかも知れないが、ある程度の空間的・社会的広がりがあって初めて、人との関わりは認識されるものであり、孤独も感じられるのではないか、という疑問も抱く。
 また、サスペンスフルに進むのか、まったりと行くのか、その境目でユラユラと尻が落ち着かず、どのようなカタチでいいたいことを観客の心に刻もうとするのかが曖昧だ。さぁここからクライマックスだという“ジャンプの前に屈み込む一瞬”もないし、かといってジワジワと海の底へと引きずり込むような重みもない。『オーシャンズ11』もそうだったが、この作品も観終えた後に達成感を覚えないのだ。

 映画と同様に感想も曖昧な表現ばかりになってしまうが、タクシーに乗って目的地を告げ、あれ、この道でよかったんだっけと不安になって、そろそろ運転手に確かめたほうがいいかなと思った途端に裏道から抜けて目的地に着いた、というような映画。
 どうにも、落ち着かない。それが狙いだとしたら、たいしたもんだが。

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