閉ざされた森
出演:ジョン・トラボルタ/サミュエル・L・ジャクソン/コニー・ニールセン/ティム・デイリー
30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4
【消息を絶ったレンジャー隊員たち。事件の真相は?】
パナマの米軍基地で、訓練中のレンジャー隊員たちが失踪するという事件が発生する。基地司令官のスタイルズ大佐から解決を依頼されたのは、犯罪の嫌疑がかけられている麻薬捜査官トム。女性大尉ジュリーは外部の介入を快く思わなかったが、救出された隊員をトムが尋問すると、訓練教官ウエスト軍曹の残虐性、麻薬密輸のウワサなど、思いもかけぬ証言と、その証言を覆す証言が続出。何が真実で、誰がウソをいっているのか?
(2003年/アメリカ)
【この面白さを存分に味わわせる配慮が欲しかった】
メリハリがあって展開もよし。二転三転どころか四転五転するストーリーを破綻なくまとめ、脚本の段階から演出、編集に至るまでよく練られた作品といえる。
夜間・雨中のシーン+隊員たちに個性が足りないため、やや見づらいところはあるものの、それを除けば全体にカメラワークは秀逸で、スリリングで飽きさせない画面とテンポの良さを作り出している。
ただ、不満もある。この手の、観ている者をケムに巻きつつ、何が真実なのか、誰が本当のことを語っているのかなど謎を撒き散らす映画に対して観客は、「えっ!」「あっ!」といった驚き、鮮やかな大どんでん返しを期待する。が、本作はそのレベルにまで、もう一歩といったところでとどまっている。
いや、謎の内容、その解決過程と語り口など全体的なまとまりは申し分ないのだが、まずスピーディすぎて“考え、そして騙される”という楽しみを味わうことができないのだ。
それに、そもそも観客ではなくある登場人物を騙すために作られた仕掛け(映画でも小説でも前例のある作法なので、そのこと自体は問題ではないが)に対して「そのために、そこまでやるか?」という違和感も残る。
ラストでニヤリとさせられるものの、『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)に始まり、『追いつめられて』(ロジャー・ドナルドソン監督)や『ユージュアル・サスペクツ』(ブライアン・シンガー監督)など、この種の“ダマシ系”映画を見慣れた現在の観客としては、騙されることは予定調和であり、そのうえで「もっとスカっと騙されたい」ものなのだ。
せっかくシャープで十分に面白さのある作品なのだから、それを観客に存分に味わってもらうために、そこにダマシがある必要性・説得力を加えつつ、考える時間を与えるという配慮が欲しかった作品だ。また作中でボレロが使われているが、この意味深な音楽は、本当に意味深な映画、やられたぁ~っと思わず唸ってしまう映画、このウソが延々と繰り返されていくのだなという内容を持つ映画にこそふさわしいはずで、この作品にはそぐわないだろう。
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