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2004/10/23

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監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:モーリッツ・ブライブトロイ/クリスチャン・ベルケル/ユストゥス・フォン・ドーナニー
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3

【刑務所シミュレーションが人格を崩壊させる】
 ある大学で開始された、ひとつの実験。それは被験者を囚人役と看守役とに分けて、擬似的に刑務所内の人間関係を作り出すというものだった。ジャーナリストのタレクは、眼鏡にカメラを仕込んで実験に潜入、囚人役として事態の推移を見守る。次第に崩壊していく被験者たちの人格。看守は尊大かつサディスティックに変貌し、囚人は内向的になり、自虐性と反発心を増していく。そしてとうとう、感情が爆発する瞬間がやってきた。
(2001年/ドイツ)

【作り物臭さが漂い、実験の恐怖が伝わらない】
 元新聞記者である主人公タレクが実験に参加した動機、他の参加者の日常などがまず描かれて、それぞれのアイデンティティが実験によりどのように変化あるいは表出し、崩れていくのか、それを映し出すのが当然であったはずなのだが、キャラクターすべてに「それっぽさ」というか、生活背景を感じさせる部分が足りないため、実験そのものがウソっぽく感じられてしまう。
 また被験者たちが狂気に追いやられていく過程=それぞれの心理の微妙な部分をカメラは捉えず、ただ“事態”を追うだけに終止しているのは、この映画のテーマを考えれば決定的な欠点だろう。

 これが事実、人間の心理変化に明確な理由や兆候などない、それぞれの背景などお構いなしに、刑務所というシチュエーションは突然に、人の心を崩壊させていく、と、いいたいのかも知れない。だとしたら、なおさら、どんな人物でも環境の影響を受けざるを得ないことを示すため、キャラクターを描き分ける必要があった。また、看守役から囚人役に与えられるジワジワとしたプレッシャーも、もっと手間ひまをかけて盛り込むべきだった。
 また、急ごしらえの実験設備や大学病院の「暗い蛍光灯」的な雰囲気、眼鏡に仕込まれたビデオカメラの映像など、ドキュメンタリー性とリアリティを高めるための工夫・努力を感じるし、手堅いカメラ割りと編集などいい仕事をしている部分もあるのだが、それらがかえって劇映画っぽさ、すなわち「作り物臭さ」を出してしまっているのも皮肉な話だ。
 その作り物臭さが、安っぽさになってしまっている。

 全体として『マイドク』(デヴィッド・ブライス監督)あたりに通じる雰囲気が漂い、つまりは「奇天烈科学者の珍実験と、その恐怖」といったB級テイストが流れている。
 いっそ参加者本人の述懐やデータなどと再現フィルムを交えつつ、純粋なドキュメンタリーとして仕上げれば、観客に問題を提起するフィルムとなり、より面白かっただろう。

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