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2004/10/24

アンデッド

監督:ピーター&マイケル・スピエリッグ
出演:フェリシティ・メイソン/ムンゴ・マッケイ/ロブ・ジェンキンス
30点満点中18点=監4/話4/出3/芸3/技4

【ゾンビと化した町人たち。逃げ切ることはできるのか?】
 片田舎の町に、突如として降り注いだ隕石群。その日から村人たちは、殺しても死なないゾンビと化し、人々を襲い始める。異変に気づき生き延びたのは、親の遺産である農場を借金のカタとして取り上げられ町を出ようとしていたレネ、身勝手な保安官、飛行機乗りのウェイン、宇宙人にさらわれたことがあるというマリオンなど、ごくわずか。決死の逃走。しかし、街の外周に沿って聳え立つ正体不明の壁が、彼らの行く手を阻む。
(2003年/オーストラリア)

【ゾンビ映画の新境地を拓いたB級アクション】
 ゾンビ映画のルールとして「襲われる恐怖、追い詰められる恐怖、自分もゾンビ化してしまう恐怖、愛する人がゾンビ化する恐怖、誰が敵なのかわからない恐怖、極限状態に置かれることによって信頼関係が破綻する恐怖……などを描かなければならない」とした。
 ところが本作では、そうした要素は、ほとんどナシ。ホラーに不可欠な“切なさ”もなく、思わせぶり感があるのは冒頭の10分ほどのみだ。

 よって、ゾンビホラーと呼ぶことはできない。代わりに重要視されているのは、パニックアクション、あるいはミステリーとしての仕上がりだ。
 倒されたゾンビが起き上がるタイミング、主役ふたりの武器の扱いや戦闘能力、貫通する銃弾などアクション面での小ジャレた演出が全体に爽快感を与えている。また、町を囲い込む壁とその正体という“謎”を付け加え、狭い町で閉塞状況にある人々を主役に据えることでミステリアスなムードも増している。謎そのものは強引というか、いかにもB級のノリではあるが、なまじホラーのセオリーに囚われず、アクションを中心に据えつつ謎の解決へ向かうという筋立てが新鮮さを感じさせる。
 ミスコン、釣りやクリケットくらいしか楽しみのない田舎町、借金のカタに取られた農場、拍車付きのブーツといった設定や小物などもストーリー展開に生かされているし、美術、音楽、特撮、特殊メイク、夜の青と血の赤とを効果的に使った画面作りも、このクラスの映画としては及第点をはるかに超えている。

 ただ、やはりチープさと、それがもたらす細部の詰めの甘さは否定できない。マリオンの変人ぶり、『エイリアン』シリーズのリプリーを髣髴とさせるレネなど各キャラクターについてはもう少し突っ込んで語るべきだったろうし、物語中盤から突然登場する○○○○○とゾンビ事件との関係はもっとスムーズな流れで明らかにして欲しかった。真っ当な戦闘コーディネーターや銃器の専門家、衣装デザイナーが参加していれば、各画面のシャープさはさらに増し、よりグレードの高い作品となっただろう。

 とはいえ、深く考えず退屈しのぎとして観れば、上出来。スジを外していても、ちゃっちくても、面白くできることを示した、奇妙ではあるが痛快な作品。ハッキリいえば、ヒョーと爽快に叫びながら“笑える”ゾンビ映画である。派手に、けれど丁寧な描写で次々とゾンビを倒していくあたりは、『バイオハザード』(ポール・アンダーソン監督)よりも、よほどゲーム的かも知れない。

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