ターミネーター3
監督:ジョナサン・モストウ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ニック・スタール/クレア・デーンズ
30点満点中13点=監3/話2/出2/芸3/技3
【殺人マシン、みたび襲来。もういちど未来を変えられるか?】
反乱コンピュータによる人類の抹殺。そんな暗黒の未来を防いだジョン。だが同時に、人類のリーダーになるはずだった自分の未来をも奪ったことになり、いまは厭世的な日々を過ごしていた。ところが、またも未来から最強の殺人マシンT-Xが刺客として現代に送り込まれ、ジョンを守る任を受けたT-850もやってくる。幼馴染みのケイトとともに逃走するジョン。事態の真相を暴き、ふたたび「審判の日」を阻止できるか?
(2003年/アメリカ)
【ディテールがまるでなっていない、大味な作品】
SFマインドや軍事マインドを持たない人が作ってしまったこと、それがこの映画の最大の敗因だろう。
そのマシンやプランはどのような経緯で開発されたんですか? 国家機密を扱う部署に無関係の人間がそう簡単に入り込めていいんですか? ウイルスに侵されたコンピュータって電波状況の悪いテレビみたいにノイズが入るんですか? どうしてそこに粒子加速器があるんですか? 危険人物を包囲する方法ってそれでいいんですか? セスナってそう簡単に操縦できるんですか?
特にギモンなのが、最強の敵T-Xの扱い。それほど強い存在として描かれるわけでもなく、そもそもどうして女性型アンドロイドなのか説明も描写もされない。
これほどディテールへのこだわりがない映画も珍しい。
素顔のままのT-850シュワ知事がサングラスや革ジャンを見つけて、おなじみのいでたちになるシーンがあったが、こうしたセンスももっと欲しかった。単に笑えればいいというわけでも、1作目2作目を踏襲すればいいというものでもない。細かな部分に至るまでファンを楽しませようと工夫を凝らして欲しかったのだ。このターミネーター世界を確固なものにしようという気概を全編にあふれさせて欲しかったのだ。
本来、そうした細かな部分をしっかりと構築することがSFアクションを支える土台となるはずなのに。「こんどは女で行ってみようか」「ここで、こんな武器を出してみようか」といった、軽くて場当たり的なノリが感じられる。しかもそのノリが、SF的には20年前の発想だから困ったちゃんだ。「建物や街をここまでやたらと破壊すれば、アクションとして派手だし上出来じゃーん」という、見える部分にしかカネと労力を割かない製作姿勢なのだから困ったちゃんだ。
ナノテクによってボディを乗っ取られそうになり、けれど使命を果たさねばならず、と板ばさみになるT-850にもゲンナリさせられるし、そのほかの人間キャラも薄っぺらで“ドラマ”がない。SFXには真新しさがない。クレア・デーンズは昔より可愛くない。ないないばかり。
評価できるとすれば、スピーディな展開で飽きさせ“ない”ところか。音響面も含めて各シーンにはそれなりに迫力はあり、オチも「ほう、そう来たか」と一応の関心を引くものだった。
そういった事件の“大筋”に関わる部分のテンポの良さ、とりあえず2時間は画面にひきつける手際はいいのだが、リズム感を重視するあまり、ディテールや背景を描き込むことを忘れてしまった、そんな映画である。
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