ディナーラッシュ
監督:ボブ・ジラルディ
出演:ダニー・アイエロ/エドアルド・バレリーニ/カーク・アセヴェド
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【レストランの一夜、それぞれの思いが錯綜する】
ウードは評判の料理人。今夜もレストラン「ジジーノ」は超満員だ。しかし店のオーナーでもある父ルイスが全権を自分に一任してくれず、ウードは苛立っていた。共同経営者の死、停電の店内、客としてやってきたマフィア、大きな影響力を持つレストラン評論家、ギャンブルに夢中で料理が手につかないスーシェフのダンカン、ウエイトレスに絡む口やかましい画商……。トラブルの予感とともに、ディナーがテーブルへと運ばれる。
(2001年/アメリカ)
【ヴィジュアル優先で、ストーリーや人物に奥行きがない】
慌しくも鮮やかに料理を仕上げていく調理人たちや、手際も頭もいいと感じさせるウエイトレス、軽妙なバーテンなど「確かに、評判になるだけのレストランかも」と思わせる。特に調理シーンのカメラワークは、誰がどのような作業をすすめているのかわからないという不満はあるもののダイナミックだし、店内を映し出すアングルも、テーブルの配置が判りづらいものの、それが気にならない安定感がある。この店、実在で、しかも監督の所有というから、そのメリットが生かされているのだろう。
で、ビデオクリップ&CF出身という、この監督。店内はロウソクと照明の赤・厨房は蛍光灯の青・店外は黒と描き分けるコントラストや物語の導入部など、雰囲気重視の画面作りに演出の背景がうかがえる。
が、それらがストーリーを生かすために使われているか、不可欠な技法かというと疑問。独りよがり、とまではいわないが、空回りではある。また、カット間のつながりの不自然さ、ストーリー性の軽視など、ヴィジュアル優先で仕事をしてきた人物特有のマイナス面も目につく。出自に反して音楽に深みが感じられないのも、おかしな話だ。
このレストランの魅力をうっすらと感じさせつつ、淡々と各テーブルの様子や人物を描くことで、コンパクトなグランドホテル型映画として大きく乱れることなくまとめられているのは評価できる。が、それぞれのエピソードは「だから、ナニ?」レベルの羅列。こうしたタイプの映画では、ニヤリ、うーむ、ふむふむ、おいおい……といった各種のエピソードを絡み合わせながら、大団円へと至らせるべきだ。ところが、ほとんどのエピソードに魅力がないし、オチ(らしきもの)にカタルシスも驚きもない。見終わった後に残るものがないのだ。
シェフ、副シェフ、オーナー、マフィアなどキャラクター豊かでありながら、その実生活まで感じさせるほどディテールに凝られているのが画商ひとりというのは、いかにももったいない。多少「詰め込み過ぎでうるさいな」と感じられても、それぞれの人物についてその背景まで浮かび上がらせる工夫やストーリー性が欲しかった。
盛り付けと給仕には満足できるが、素材と調理法には配慮の余地アリ。そんな料理に例えられる作品だ。
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コメント
TB許可ありがとうございました。
こちらもTBさせていただきましたので、ご報告させていただきます。
今後も素敵な感想を見にお邪魔したいと思います。
サイト運営頑張ってください!
投稿: tamas | 2004/11/09 23:23
はじめまして、こんばんは。tamasと申します。
貴サイト様へは、「爆裂BLOG」様の「映画好きに20の質問 参加者リスト」からやってきました。
自分のBLOGでも「ディナーラッシュ」の感想を載せているので、興味が湧き、書き込みさせていただきます。
自分以外の方の書かれる感想というのは、新鮮な視線による切込みが多く、とても勉強になります。
もしご不快でなければ、こちらの感想を当BLOGの「ディナーラッシュ」の方にトラックバックさせて頂きたいのですが・・・。
よろしければ、ご検討くださいませ。
では、これにて失礼します。どうもお邪魔致しましたm(_ _)m
投稿: tamas | 2004/11/09 19:05