コール
監督:ルイス・マンドーキ
出演:シャーリーズ・セロン/ケヴィン・ベーコン/ダコタ・ファニング
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【家族を引き裂いた3つの場所の3つの監禁】
美しき妻カレンと幼い娘アビーに見送られ、自家用機で学会へと向かう麻酔医師のウィル。しかし3人組の誘拐犯が彼らを引き裂く。アビーは連れ去られ、カレンは一味の首領ジョーによって監禁、いっぽうウィルも妖艶なシェリルに監視され、身代金支払いを強要される。3つの場所、3つの監禁。誘拐犯たちはこの手法で幾度も大金をせしめていた。が、喘息の持病を持つアビーが発作を起こしたことで歯車が狂っていく。
(2002年/アメリカ)
【大事なところでズッコケてしまった作品】
相変わらず存在感タップリのダコちゃん、若妻役がハマっているシャーリーズ・セロン(何故か「好き系」の映画によく出ていて、今年だけで3本も観ている)、そして知能的誘拐犯を演ずるクセ者ケビン・ベーコン。配役は決まりすぎるほどだ。
冒頭部もクール。誘拐犯たちが何度も成功を重ねてきたことを示し、しかし3人組が一枚岩ではないことも微かに匂わせる。ウィルの社会的地位や家族がハイソサエティな生活を満喫していることもうかがわせる。
道具立ても揃っている。医者という職業とウィルの研究題材、喘息と発作を抑えるクスリ、自家用機といった設定・小道具は、ムダにされることなくストーリーに生かされているといえる。
ただし、この犯罪、3人を分断させ、それぞれを監視することで勝手な真似をさせないというメリットがある反面、それだけ手間もかかり、リスクも増えることを忘れてはならない。被害者側も、何とか連絡を取り合おう、励ましあおうとするのではないか。そのあたりがキッチリと描けていないことが気にかかる。
たとえば家族3人だけに通じる合言葉だとか、ご近所さんが別々の場所でカレンとアビーを目撃して不審に感じるとか、いくらでもサスペンスを盛り上げる工夫は取り込めたはずだ。喘息の設定や「同時に3人を誘拐・監視」といった状況を、もう少し生かせたはず。上映時間は短めなので、あと2つ3つの要素を盛り込む余地は十分にあっただろう。
それでも、破綻なくまとまった画面やテンポのいい展開など、一定以上のスリルを保ちながら観客を飽きさせない配慮は感じられる。だから、多少のキズに目をつぶることのできるまずまずの良作になって“いいはず”だった。
ところが、クライマックスがすべてを台無しにしてしまっている。「をいをい……。そこで父親が○○○で、○が○○されている○○○に○○○○のってアリかぁ」って。
これでは「同時に3人を誘拐・監視」という設定も、それまで積み上げてきた喘息のゴタゴタも、まったく意味をなさないドタバタへと収束していく。単に「娘をさらわれた父親がキレた」というだけの映画になってしまっている。
未読ではあるが原作も同様の展開なのだろうか。だとしたら、そのまま映画化したセンスに疑問を感じる。何がしかの改悪脚色が施され、このラストに説得力を持たせるはずの部分が削除された結果なのだとしたら、なおさら製作者のセンスは疑われる。
大事なところでズッコケてしまった作品だ。
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コメント
こんにちは、谷川さん。
TBさせていただきました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 晴薫 | 2005/07/27 09:16