マッチスティック・メン
監督:リドリー・スコット
出演:ニコラス・ケイジ/サム・ロックウェル/アリソン・ローマン
30点満点中16点=監4/話3/出3/芸3/技3
【病的な潔癖症、そして詐欺師、そして父親】
ゴミ1つ許せず、少しのシミも我慢ならず、ドアや窓は必ず3回ずつ閉める潔癖症のロイ。けれど詐欺師としての腕は一流だ。ある日、彼は意外な人物の訪問に驚く。俺に娘がいたなんて! しかも娘は、自分も詐欺師になりたいといいだす始末。いっぽうロイの相棒フランクは、チマチマした仕事に耐え切れず、大きなカモを探し出してくる。慣れない父親役と久々の大仕事。ロイは完遂することができるのだろうか?
(2003年/アメリカ)
【安心して観られる作りだが、それ以上ではない】
ダマシ系の映画としては、まずまずのデキだろう。これといって凝った伏線が張られているわけではないが、ストーリーはかっちりとまとまっている。
オープニング、ドアや窓のロックを「ワン、ツー、スリー」とチェックする神経質なロイの姿は、静けさの中に非日常を感じさせる。ロイとフランクの詐欺師としての仕事ぶりも、手堅く、わかりやすく描かれている。娘の登場、ロイの戸惑い、大仕事、トラブルという一連の流れも、整合性が取れている中にもスリルを漂わせているように感じられる。そして、そこまで語られてきたことがバラバラと音を立てて崩れ、同時に別のカタチで組み立て直されるクライマックス。この世界の中でロイだけが取り残された感覚に襲われている、その瞬間を映し出した映像は見事だ。おまけともいうべきカーペット売りに身をやつすラストまで、澱みなくスマートに進んでいく。
ロイの潔癖症という設定もスパイスとして効いているし、ブルドッグの置き物など印象的なアイテムもほどほどに散りばめられている。
ただ「あー、なるほどね」というのが率直な印象。「なんだよ、ソレ」ほど悪くはないが、かといって「うぎゃぁ、そういうことだったかぁ」というほどの驚愕もない。ロイほどには、足元から地面がなくなったような喪失感というか、やられた感が薄いのだ。それはとりもなおさず、伏線らしい伏線がないせいでもあるが、コン・ムービーに不可欠のセンス・オブ・ワンダーに欠けているのだ。かっちりと作られていて(それはそれで素晴らしいことなのだが)遊びが少なく、もういっちょオシャレ感覚があってもよかった、とも思わせる。
たぶんニコラス・ケイジがニコラス・ケイジすぎるせいで(自分でも意味不明。大きくハズすことなく、かといってゾクゾクするほどでもなく、手堅い芝居をしている、という感じか)、安心して観てしまって、もういちど観てみようという気にならないのだ。
いや、もういちど観て伏線の有無を確認すべきなのかも知れないが、まぁこういう事件があったとしても、それはそれでいいかと、深く分析することなく妙に落ち着いてしまう。
そう、安心して観られる作りだし、観て損はしないと思う。けれど、それ以上ではない映画だ。
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