スパイダーマン
監督:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイア/ウィレム・デフォー/キルステン・ダンスト
30点満点中16点=監4/話4/出3/芸2/技3
【アメコミヒーローの青春活劇】
気弱な高校生ピーターは遺伝子操作によって生まれたクモに噛まれ、特殊能力を身につける。人間離れした反射神経、危機察知能力、垂直の壁も登れる指、手首から噴出される糸……。スパイダーマンの誕生だ。いっぽう人体増強を研究する科学者ノーマンは自らを実験体とし、凶悪なグリーン・ゴブリンへと変身。彼を邪魔者扱いする人たちを殺し、さらにはピーターの想い人であるMJにも、その魔手を伸ばそうとする!
(2002年/アメリカ)
【きっちりと作られた娯楽作】
設定そのものはまさに“マンガ”だが、「ただの高校生がヒーローとなったときに当然起こりうるハプニング」「スパイダーマンが実在するなら発生するであろう出来事」を適切に配し、マンガなりの説得力を持たせることに成功している。
特に、内気で貧弱なピーターが特殊能力を得る際のビフォア&アフターの描き分けがいい。冴えないビフォアから一転して、ピーター自身がデザインしたコスチューム、スパイダーマンであることを利用した金儲け、名シーンともいえるスパイダーマンとMJのキスなど、アフターのハシャギぶりが痛快だ。荒唐無稽な話であっても、いや、荒唐無稽だからこそ、こういうディテールやストーリー展開へのこだわりが大切なのだ。ピーターがヒロインMJへ寄せる淡い恋、ピーターの身を案ずるメルおばさんのセリフなど、ニヤリとさせたりシットリさせたりの場面も適度に織り込まれ、エピソード1つずつのテンポもいい。
青春モノとコメディとアクションとを上手く融合させ、きっちりとした構成でまとめた好作品といえる。
そのキッチリ感が、窮屈な印象を与えているという側面もある。
MJへの想い+グリーン・ゴブリンとの対決を軸としてストレートかつスピーディに進むため、アトラクション的なノリとなり、ミステリアスな雰囲気やメリハリに欠けるのだ。高校編からNY編への転換も“いつの間にか”という感じで、全体に一本調子。
バストショットを多用するなど、やや単調な画面作りも一本調子となった要因だろう。画面全体が赤っぽく、かつ色のコントラストがハッキリしているのは、赤基調のスパイダーマンを空に飛ばした際の違和感を軽減するためだろうが、どうにも安っぽく映ってしまう。かといってCGやアクションも、ダイナミックで及第点を与えてもいいとは思うものの、真新しさが足りず、背景から人物が浮いている感覚も否めない。
音楽にも不満が残る。せっかく力の入ったタイトルバックなのに、テーマ音楽がキャッチーでないのが痛い。
キャストは、プラスマイナスゼロ、といった感。トビーは「割としっかりしているダメ兄ちゃん」そのものだし、キルステン・ダンストはスチール写真よりも、こうして動くと意外とチャーミング。科学者に見えないウィレム・デフォーはミスキャストに思えるが、そのぶんタブロイド誌編集長役のJ・K・シモンズが、50~60年代風ブン屋のノリで笑わせる。
ただしキャラクターの設定・造形はあっさりしすぎで、ピーターやMJには「もう少し悩めよ」といいたくなるし、ピーターの友であるハリーは登場しているのが不思議なくらいキャラクターが描き切れておらず(どうやら『スパイダーマン2』では重要な役割を果たすようだが)、ノーマンの失脚や周囲との関係も唐突に感じる。全体として、各人物の行動の動機となる重要な部分の描写がかなり弱いと感じる。
ま、目くじらを立てず、ポテトチップスでもつまみながら観るには、大きな不満はない映画。とりあえず2時間、キッチリと見せ切るようまとめられた娯楽作品として評価できる1本だろう。
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