« スパイダーマン | トップページ | シッピング・ニュース »

2004/11/03

バニラ・スカイ

監督:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ/ペネロペ・クルス/キャメロン・ディアス
30点満点中13点=監3/話2/出3/芸3/技2

【優雅な生活を過ごす男を悩ませる悪夢】
 莫大な遺産、青年社長の座、美しい恋人ジュリー。順風満帆の人生を歩むデヴィッドは、異国から来た娘ソフィアの新鮮な魅力に恋をする。嫉妬に駆られたジュリーはデヴィッドを道連れにクルマごとダイブ! 一命を取り留めたデヴィッドだったが、自慢の顔は傷つき、悪夢に悩まされるようになり、不思議な出来事にも襲われる。デヴィッドは精神科医マッケイブとの対話から、事件の真相を解き明かそうとするのだが……。
(2001年/アメリカ)

【テーマと作風とのバランスを欠いた作品】
 ネタバレを避けてこの映画を語るのは、極めて難しい。つなぎの拙いカット割り、ボブ・ディランの『フリーホイーリン』やビートルズなど作品の雰囲気とはややミスマッチの音楽や美術、意味ありげなセリフをはじめとする散りばめられた伏線など、映画内にあるいい点・悪い点に言及すると、たちまち“オチ”とニアミスを起こしてしまうのだ。
 が、ひとついえるのは、観た後に「スッキリしない」という人と「考えさせられた」という人にハッキリ分ける作品であるということ。スリラーを期待すれば前者、というか「さんざん引っ張って、それかよ」と叫びたくなる。いっぽう人間ドラマを望んで観れば後者となり、それなりの収穫はあるだろう。

 仮に後者の姿勢で観るのを正しいとしてみよう。だとすると、愛するソフィアに会いたい、でも会えない、というデヴィッドの苦悩やわびしさを徹底的に描くべきだったろう。そして観客に対して「好きな人といっしょにいること、いられないこと」の意味や「自分にとって本当の幸せとは?」という疑問を突きつけるべきだった。それでこそ「考えさせる人間ドラマ」だといえる。
 ところが実際には、ひょっとして死んだのはジュリーではなくソフィアだったのか、でも何故……と、ミステリー色を前面に出した思わせぶりな展開。突然ジュリーに変わるソフィア、誰もいない街、デヴィッドに敵対する会社役員、前述のいい点・悪い点などが(それが狙いだったのだろうが)必要以上に“謎”となり、「人と人との関わりを考えさせる映画」だとするには無理のある内容となっている。

 かといって純スリラーかというと、そうではないのだから、なんとも中途半端。
 内容も設定も構成もオチもまったく異なるが、ケン・グリムウッドの小説『リプレイ』のほうが、よほど切なく、しかもミステリアスな雰囲気を生かしつつ「好きな人といっしょにいること、いられないこと」「自分にとって本当の幸せとは?」という問題を突きつけてくる。

 主演級3人はそれぞれ魅力的。また、やや暗めの画面を作り、派手な色味を抑えつつ全編に無機質さと情熱のコントラストを漂わせて、お話に引きつけるだけの「見た目の力」は持っている。だが、どうもテーマとストーリーと撮りかたの関係がバラバラという印象が強い。どこかでクツを履き違えた感じの仕上がりだ。

|

« スパイダーマン | トップページ | シッピング・ニュース »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: バニラ・スカイ:

« スパイダーマン | トップページ | シッピング・ニュース »