パイレーツ・オブ・カリビアン
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ/オーランド・ブルーム/キーラ・ナイトレイ/ジェフリー・ラッシュ
30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4
【海賊vs海賊vs海軍 カリブ海を舞台にした海洋アドベンチャー】
キャプテン・バルボッサが操る伝説の海賊船ブラックパールが、総督の娘エリザベスを連れ去る。彼女が持つ黄金のメダルこそ、バルボッサたち海賊を“不死の呪い”から解くカギなのだ。エリザベスに恋心を抱く鍛治師ウィルは、ブラックパール号の元船長ジャック・スパロウとともに軍艦を奪って海賊たちを追い、海軍もエリザベス救出と海賊掃討のため出撃。そしてウィルは、自らにも海賊の血が流れていることを知る……。
(2003年/アメリカ)
【アニメ的な楽しさを持つ作品。クライマックスの練り込みに難】
誰もが感じ取れるように、極めてアニメ的な映画だ。
多くの謎を内包するオープニングからジャック・スパロウのユニークな登場シーン、序盤にはジャック対ウィル、中盤には海賊船対軍艦、そしてクライマックスの大活劇と、各所に見せ場を用意して一気呵成に進むストーリー展開。やや説明口調も多いが、ユーモアを漂わせつつもカッチリと切れがよく、メリハリも効いたセリフ。出生の秘密を抱える熱血漢の主人公や憎々しげで打算的な悪党、デブとノッポのコンビといったキャラクター設定。画面に合わせて作られたサウンドトラック。
あらゆる部分に“アニメっぽさ”があふれている。ジャックとウィルが小船を逆さにし、それを被って海底を歩くところなどアニメでなくて何だというのか。
技術的な知ったかぶりをすれば、被写界深度の深い(手前から奥までピントが合っている)撮りかたが多くて平面的な印象を与えるのも、アニメっぽさの一因。対象物に近い位置でカメラを回し、海の広がりや深さを感じさせず箱庭的なこと、クレーンを多用することなども、劇画的なイメージをもたらしている。
脚本は『アラジン』や『シュレック』などのスタッフ。監督は、やはり劇画的だった『マウスハント』のヴァービンスキー。こういう作品になって当然といえば当然だ。
それが悪いわけではない。アイディアがふんだんに詰まっていて、2時間20分をドドドっと見せる流れの良さもある。“アニメっぽさ”は十分に成功しているといえるだろう。
骸骨のCGもいい仕事をしていて、実写部分との整合性が取れている。ここでウソっぽさが表出してしまうと、それはアニメっぽさも打ち消すことになって映画の質をガクっと落とすのだが、よく頑張ったと感心する。
惜しむべきは、ストーリーとキャラクターのバランス。このストーリーなら本来は、もっとウィルとエリザベスにスポットを当てた展開であるべき。ところがジョニー・デップが凄すぎて、デップの映画になってしまった。ウィルの見せ場を増やし、海賊を追う提督にもキャラクター的な深みを与えれば、さらに完成度が増したのではないか。
また前述の通り、海の広さが感じられなかったり、海軍の規模がわからなかったりなど、スケールの小ささにも不満が残るところだ。
そして、思い違いでなければ、クライマックスに重大なミスがある。ネタバレになるため詳しくは述べないが、本来ならA→B→Cの順であらねばならない出来事がA→C→Bになってしまっている。正しい順番でおこなわれていたなら、やはり完成度は高まったのだが。
いくつかの難点を除けば、かなりよくできたエンターテインメント。次から次へと波また波なので、それが逆に単調さになってしまっている感もあるが、有無をいわさぬ展開で楽しめる作品であることは間違いない。
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