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2004/11/21

コップランド

監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:シルベスター・スタローン/ハーヴェイ・カイテル/レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ
30点満点中15点=監3/話3/出3/芸3/技3

【警官の街における“正義”とは何か?】
 NYの警官が多く住み、安全で知られるニュージャージー州ギャリソン、通称コップランド。街の保安官フレディは、安全=退屈な仕事を抜け出すこと、すなわちNY市警への転属を望んでいた。だがコップランドが保障する安全とは、市民のためではなく、警官のためのもの。街を作ったレイは、警官である甥の不祥事を揉み消そうと画策、フレディにも詮索を禁じる。フレディは調査官ティルディンに協力を求められるのだが……。
(1997年/アメリカ)

【浅くて短く、容積が足りない映画】
 映画で大切なのは容積だ。
 登場人物や事件が多彩で左右にも前後にも幅のあるストーリーなら、1つ1つのエピソードや個々の人物の描き込みが少しくらい浅めでも、容積は稼げる。逆に限定された空間・出来事を扱うなら、深く掘り下げなければならない。
 この映画は、ギャリソンという小さな街だけでストーリーが進み、登場人物も限られるため後者に属するはずだが、深さが十分ではない

 前半、スピード違反を見逃したりなど、面白みの少ない仕事に対するフレディの倦怠感はよく出ている。が、片方の耳が不自由であることがどう職務に影響しているのかが描かれず、それゆえ画面に滲み出てくる諦めの感情も不足気味。また、結局は正義に目覚めて(?)、恩人でもあるレイに対抗する動機も弱いように感じられる。
 レイについても、フレディへの懐柔策や事件の揉み消しに懸命になる様子や周囲への影響力の大きさをもっとしつこく盛り込んでもよかったろうし、夫が捜査中に見殺しにされたリズも「そっとしておいて」なんて物分かりがよすぎる。レイ・リオッタ演じるゲイリーも、警官として何が大切と考えているのかが曖昧で、やはり行動の動機づけが弱い。

 ま、それはそれでリアルともいえる。心の奥底の感傷や打算など、そう簡単に表出などしないのかも知れない。
 そう思わせる拠り所となるのがキャストと演技。悩める保安官役のスタローンは思ったほど悪くないし、警官としての実力を持っていることも一応は描かれる。ハーヴェイ・カイテル、レイ・リオッタ、デ・ニーロといった個性派も「そのまんま」という気がしなくもないが、必要以上にオーバーになることなく演じている。
 バストショット~ウエストショットが中心であることからも、この映画が男たちの演技を楽しむための作品であるとわかる。

 それでも、やっぱり“浅さ”は気になる。1時間45分では、十分な演技もストーリーの奥行きも引き出せない。クライマックスのスローモーションも安っぽさが勝っている。
 題材も語り口もキャストもいいのだから、もっと時間をかけて丁寧に、掘り下げる方向でストーリーを展開していれば、と思う。

 ちなみにアメリカでは自治体ごとに治安維持組織を持たなければならないそうで、NY市警はもちろんニューヨーク市の警察、フレディはニュージャージー州の保安官という設定のようだ。そのあたりがわからなくても別に問題はないが、立場の違いをストーリーに生かすこともできたのではないだろうか。

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