トランスポーター
監督:ルイ・レテリエ/コリー・ユン
出演:ジェイソン・ステイサム/スー・チー/フランソワ・ベルレアン/マット・シュルツ
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4
【プロの運び屋が遭遇したハプニング】
元軍人のフランクは、いまではBMWを駆る運び屋。プロ意識が高く、契約厳守&荷物の中身は見ない&名前を聞かないという3つのルールをモットーとし、仕事は確実、犯罪世界での評判も高かった。ところがあるとき運んでいる荷物が若い女性ライであることを知り、依頼人には愛車を爆破され、おまけに警察からもマークされるようになる。すべてを収拾させるため、フランクは自ら報復と解決に乗り出す。
(2002年/アメリカ・フランス)
【大枠はシッカリ、ディテールに難あり】
テレビでチラリと観て、これは面白そうだとスイッチオフ、あらためてDVDで観賞した作品。が、ホームランとはいかず、二塁打止まり。
ストーリーも演出も、大枠の部分では申し分ない。
まずはフランクの仕事に対する姿勢(時間に正確、依頼人が契約と異なる行動を取ると仕事をしようとせず、銃を突きつけられても冷静沈着)やドライビング・テクニックをキッチリ描いたオープニングが素晴らしい。カーチェイスも迫力たっぷりで、クルマの疾走感といい、慌てふためく通行人の様子といい、実にサスペンスフル。
ハプニングに巻き込まれていく展開も面白く、格闘シーンも狭い場所や倉庫といったシチュエーションを上手く生かしているし、クライマックスもセスナやトレーラーを持ち出して飽きさせない作りになっている。
全体に、多彩なアングルと細かなカット割りで十分にスピード感を出しており、かと思えばフランクの背景にニースの自然をさりげなく配して空気感や広がり感も盛り込むなど、映像はシャープかつ鮮やかだ。
が、物語に説得力を与え、よりスリリングな雰囲気を出すためのディテールにやや難がある。
たとえば積荷が女性だと判明するシークエンスでは「これだけのプロなのにタイヤをパンクさせるって……」「おしっこがしたいからって、クビにロープを巻いて繁みってのはなぁ……」と疑問を感じてしまう。せめて、フランクが占いに凝っていて、仕事をやらないほうがいい日なのに断れず受けてしまったとか、朝食の席でミルクをこぼすとか、良くないことが起きる前兆を入れ込むべきだったろう。
エンディングの危機の切り抜けかたも、なんだか安っぽい刑事ドラマのようで、ひとヒネリ欲しかったところ。すべてが終わって、なお“フランクの仕事は続く”といった雰囲気も出してもらいたかった。
登場人物たちのキャラクター的な広がりも弱い。フランク役のステイサム自身は役柄にピッタリで体もよく動くのだが、元軍人という設定があまり生かされていない。事件の解決を容疑者であるフランクに託す警部も行動が唐突だし、悪役にも魅力がない。
いかにもサントラを売らんかなというニギヤカな音楽も興醒めだ。
以上のような点が改善されていれば、ホームランとなったはず。とはいえ細かな点にメクジラなど立てず、ひたすらスピード感に身を任せて楽しむことのできる作品であることは確かである。
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