ホワット・ライズ・ビニース
監督:ロバート・ゼメキス
出演:ミシェル・ファイファー/ハリソン・フォード
30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4
【霊現象に悩まされる妻がたどり着いた真実とは?】
1年前に交通事故で義父を亡くし、こんどは愛娘を大学の寮生活へと送り出したことで、クレアは寂しさに落ち込んでいた。そんな折、勝手に開くドア、物音、バスタブの水に浮かぶ女性の顔など不思議な出来事が相次いで起こる。霊の存在を感じ、隣の男が妻を殺したのだと夫のノーマンに訴えるクレア。大切な学会を間近に控えるノーマンは取り合わず、セラピーへ行くことを勧めるのだが、クレアはある重大な事実を思い出す。
(2000年/アメリカ)
【ミステリーではなくスリラー。巨匠への敬意にあふれる】
ヒッチコックへのオマージュとして作られただけあって、このスリラーの巨匠による名作から多くの借用をおこなっている。『裏窓』のように隣人を観察し、夫が何か重大な秘密を隠しているのではないかと疑う展開などは『断崖』や『疑惑の影』と共通する。
単なる借用にとどまらず、ヒッチコックが確立した恐怖演出を踏襲して敬意を表そうとする気持ちや、スリラーファンにニヤリとさせようという意図が詰まっていて、なかなかに楽しい。
圧巻はクライマックス。体の自由を奪われたままのクレアがバスタブへと沈んでいくシーンは、『サイコ』に真っ向から挑みつつ『サイコ』とは異なるサスペンスを生み出したことで大いに評価できる。
製作思想が思想だけに、至極真っ当な“怖がらせかた”。静寂、急に背後に現れる人影、その際の「ジャンっ」といったBGM、一気にたたみかけるラストなど、奇を衒わない手堅さのあるスリルだ。
ミシェル・ファイファーの演技と、それを捉える撮影も、このスリルを支えている。1カットずつが十分な長さを持ち、ファイファーが抱く恐怖をこってりと画面に塗りたくる。登場人物が限られている(というか、ほとんどファイファーの一人芝居)ため物語に広がりはないが、そのぶん奥へ奥へと抉り込む印象。室内や夜、水中など暗めの舞台、しかもベッドサイドのランプやうっすらと差し込む戸外の光などを頼りにアンダー気味に映すため、何がどうおこなわれているか凝視しなければならず、それがまた恐怖を増大させる。
ただ、話のオチは弱い。たとえば『消えた花嫁』(デヴィッド・グリーン監督)のような大ドンデン返しを期待すると肩透かしを食らってしまうだろう。「え、そういうことだったの」といった感じだ。
だからミステリーではなく、あくまでスリラーとして楽しむ作品。スリラーとして観るなら、まずまず上質な映画だ。
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