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2004/11/27

CUTIE HONEY キューティーハニー

監督:庵野秀明
出演:佐藤江梨子/市川実日子/村上淳/及川光博/手塚とおる/篠井英介/松尾スズキ/京本政樹
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3

【悪の軍団パンサークローに立ち向かう愛の戦士】
 事故により記憶と体とを失った如月ハニーは、父・如月博士が開発したIシステムによりアンドロイドとして蘇生、物質を自在に変化させる能力を持つこととなった。Ⅰシステムの秘密を狙う悪の組織パンサークローは如月博士を殺害、さらに如月博士の遺志を継いだ宇津木博士を連れ去る。組織壊滅と復讐のため、派遣OLのハニーはキューティーハニーとなってパンサークローに立ち向かう。愛と友情と信頼を武器にして。
(2003年/日本)

【庵野監督の方法論が空回り】
 アニメーション的な処理でアクションを見せる「ハニメーション」が売りもの。アニメ界では有名な“金田アクション”や“板野サーカス”を実写でやらかし、役者の動作も展開も特撮もすべてがアニメ調の「デジタルコミックシネマ」。そうした挑戦は、悪くない
 ただ、ハニメーションを存分に生かした見せ場は思ったより少なく、いわゆる戦隊モノっぽさが全面に出たチープなアクションが作品の大部分を占める。合間のドラマ部分にも内容がない。意気込みだけが先行して全体としての完成度が低くなってしまったような仕上がりだ。

 さらに足を引っ張っているのが画面作りの拙さだ。微妙に「もう少し引けば」「もう少し寄れば」という中途半端なフレーミング、夜間や室内はアンダー気味であるのに加えて解像度が荒いため細部が見づらく、昼間や屋外はレイアウトとロケーションが悪くてゴチャゴチャしているかノッペリしているかのどちらか。とにかく見苦しい画なのだ。
 かなり頑張っていたのが編集。細かなカットの連続をズバっ、バシっと違和感なくつないでリズム感を出した。それだけになおさら、それぞれのカットの構成力のマズさが残念だ。

 演技陣は、バカっぽくても、お尻がちょっと大きめでも、サトエリのハニーは適役だと思う。が、実はもう少し演技力のある人なのに、それを引き出し切れていない(そういう映画ではないから仕方ないけれど)。またほとんどサトエリのプロモーションビデオである割に、いままでファンすら知らなかった、監督だけが見出すことのできた彼女の新しい魅力というものを出せていないのが残念だ。
 光るのがパンサークローの執事、手塚とおるの存在感。この人を除けば全体に“それなり”で、記者役の村上淳、悪役ブラック・クローを演じた及川光博や悪の首領シスター・ジルに扮した篠井英介も、手堅くはあるが作品のイメージを考えればもっとブッ飛んでいても良かったろう。

 ツボだったのは松尾スズキ係長の「俺の東京タワーがぁっ!」というセリフ。ここで立ち止まる人は少ないだろうが、コレこそが本作の論旨。つまりは、誰もが心に抱いているパーソナルな価値観・世界観・欲望だ。
 ハニーを取り巻く愛も信頼も思い出も、シスター・ジルが見せる永遠の命への執着も、組織の中に孤立する秋夏子警部のプライベートも、すべてはパーソナルなものであり、他人にとってはどうでもいいその人なりの価値観・世界観であり、けれど自分自身の幸せのためにはどうしても必要な欲望なのだが、それがぶつかったときにドラマが生まれるのだ。

 この映画じたい、カネがない、時間もない、ならば欲望のおもむくままに、とりあえずやりたいことだけやっちゃえという庵野監督お得意の方法論で作られた作品。クローズドな世界に住むアニメファンに向けてのアニメ作品なら、その欲望を観客と分かち合うこともできただろうが、さすがに実写の商業映画では空回りしてしまったように思える。
 前述の撮影関係の欠点がクリアされて個々の画面のシャープさが増し、ストーリー展開やキャラクター設定もマンガ寄りから劇映画寄りへともう少し傾き、十分な予算と時間が取れていたなら、1本の映画としての完成度というか真っ当さが向上して、この空回りは緩和されたのだろうが、そうすると監督の欲望が薄まることにもなるか。難しいところだ。

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これは今の日本の才能が結集して仕上げたジャパニーズ・クール・ムヴィーの傑作ではな [続きを読む]

受信: 2005/10/22 20:29

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