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2004/11/09

エネミー・ライン

監督:ジョン・ムーア
出演:オーウェン・ウィルソン/ジーン・ハックマン/ウラジミール・マシコフ
30点満点中14点=監3/話2/出2/芸3/技4

【敵地に取り残された兵士の、決死の脱出行】
 和平間近なボスニアを監視する任に就く米軍空母カールビンソン。兵士たちの士気は低く、戦闘機パイロットのバーネット大尉も「戦えないなら軍をやめたい」と漏らすが、偵察中、ミサイルに撃墜されて敵の只中に放り出されてしまう。救出作戦を発動するレイガート司令官。しかし、事を穏便に済ませたい上層部に阻止され、バーネットはたったひとりで、敵の執拗な追撃をかわしながら安全な地域まで逃げなければならなくなった。
(2001年/アメリカ)

【迫力のシーンを生かしきれない稚拙な語り】
 やってみたいことがヴィジュアルイメージとしてまずあって、それにストーリーを後付けしたような印象を抱かせる。
 その“やってみたかった”部分は、さすがに力が入っている。戦闘機とミサイルのファイト、そして脱出は(いくぶんCGの臭さが鼻につくところはあるものの)スピーディでスリリング、追跡者からの銃撃も同様で、ブービートラップと対人地雷地帯、街中や雪中での戦闘など、火器が中心に据えられているシーンはおおむね迫力がある。たとえ、他の映画からの借り物に思えるアイディアが多いとしても、だ。

 が、その間をつなぐ手際が、いまひとつ。
 人物の周囲をカメラが回り込んだり、クローズアップがあったり、手持ちカメラのブレを生かして臨場感を出そうとしたり、スローに早送りにコマ落としと、とにかく映像が大人しくしていない。“バリエーションにあふれる絵作り”という域を超え、すべてのシーンが意味ありげに見えて、キモとなるシーンとの差別化が曖昧になってしまっている。カネを使っていない場面(空母艦内、司令室)でも、そこそこ上手に雰囲気を出すだけの演出技量はあるから、直球でも面白いアクション映画になっただろうに。サウンドトラックもやや安っぽく、場面や作品全体にそぐわない感じだ。

 全体的なストーリーも、十分に練られていない
 たとえばある地点から別の地点への移動は、かなりの距離があって困難な道のりであるはずなのに、バッサリと省略されている。ここでも細かな盛り上がりを作ることはできたはずだ。
 また、なぜセルビア軍がそこまで執拗にバーネットを追うのかは、お話のキー。米軍が衛星の赤外線カメラでバーネットを追うシークエンス(モニターにはバーネットや敵兵の影しか映らない)は、この「なぜ」に関わってくる重要な部分だが、やけにアッサリ。少し考えれば、わざわざ赤外線カメラを使う理由、バーネットの動きが止まったことを訝る司令室、迫る敵兵、自分が追われる理由を認識するバーネット、それを聞き出そうとする司令室、話さないバーネット、話さないという行動に説得力を与えるキャラクター設定……と、この部分をグングン面白くするアイディアは次々と沸いてくるのだが。

 キャラクターがまったくといっていいほど“立っていない”のが、この映画の最大の欠点かも知れない。バーネットは「戦いたい」と漏らしていながら、いざ戦地に放り出されると、自らの兵士としてのスキルはまったく発揮せず、ほとんど偶然の助けだけを借りて逃げていく。それはそれでいいのだが、ならば窮地に陥ったときに「戦いたいなんて考えるんじゃなかった」という描写が必要だ。あるいは逆に、戦闘を望むだけのスキルや、敵をまんまとハメる狡賢さを持つことをあらかじめ示し、そのキャラクター設定を生かした戦闘シーンを作るべきだったろう。これでは単にラッキーなだけの頭の悪いお調子もんだ。
 レイガート司令は、もっと悲惨。ただ行き当たりばったりのオヤジ。命令に背いてまでバーネットを助けようとする行動の、そのバックグラウンドがまったく描かれていない。ジーン・ハックマンだとは信じられぬほど頭が悪く、石頭でもない。
 唯一、敵側の追跡者にだけキャラクター的なふくらみが期待できそうだったのだが、これも掘り下げ不足に終わっている。

 いや、まったくツマラナイというわけでもない。ただ、スコーンと抜け出たところ、快感を覚えるところがないのだ。
 主要スタッフがこれまで手がけてきた映画には「そこそこ面白いけれど傑作と呼ぶには何かが足りない」という作品が並ぶ。本作も、まさにそのレベル。打率.280、本塁打20本は打てる(そこそこのものは作れる)けれど、同じポジション(アクション映画界)にもっとスゴイ打者がいるのでコンバート、ついでに盗塁やバントといった機動力も生かして(いろんなことをやってみる)個性を出すことに努めるのだが、勢い余って三振やエラーが増えた、というイメージの映画だ。

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