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2004/11/13

ハリー・ポッターと秘密の部屋

監督:クリス・コロンバス
出演:ダニエル・ラドクリフ/エマ・ワトソン/ルパート・グリント
30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【秘密の部屋を開き、学校を危機に陥れようとするのは?】
 2年生になったハリー。しかし何者かがホグワーツ魔法魔術学校の“秘密の部屋”から怪物を解き放ち、生徒たちを次々と石に変えていく。50年前と同じ悲劇を繰り返そうというのだ。仲良しの森番ハグリッドは容疑をかけられて逮捕、ダンブルドア校長も責任を問われて解任、学校は閉鎖の危機を迎える。自身も命を狙われるハリーだが、勇気と知恵を振り絞って、親友のロンやハーマイオニーとともに謎の解明へと乗り出す。
(2002年/アメリカ)

【しっかりとまとめ、次につなげる役目を果たした】
 シリーズ2作目、映画化第2作目。つまり自由と制約とが等分に与えられることになる。

 主だった人物や基本設定については、すでに第1作で登場し説明されているため、自由に動かすことができる。勇気と知恵のハリー、怯える表情が極上のロン、勉強好きでおせっかいのハーマイオニー、透明マントや禁じられた森などは、1作目からの連続体として上手く扱われている。
 そのぶん新登場の人たちの描写に時間が割かれるわけだが、それなりの登場機会を与えられているのはルシウス・マルフォイくらい。ロンの妹ジニー、新入生コリン・クリービー、物語のキーとなるトム・リドルあたりは、役柄の重さと比較して画面上の扱いは薄い。ロンの父アーサーやコーネリアス・ファッジ魔法省大臣、嘆きのマートル、役立たずのロックハート先生(それにしてもこの先生、あまりに役立たず。まさか、学校の危機を察知した校長が『人身御供』として用意したとも思えないが)ともども「次回作以降のため、出すだけは出しておく」という意識が見える。
 そんな中で白眉は、屋敷しもべ妖精のドビー。造形や演技(?)は原作を上回り、やや殺伐とした感のあるこの2作目で、コメディメーカーとしての役割を立派に完遂している。

 後に起こる出来事、以前に起こった事件の伏線や解明が、複数巻に渡って巧みに配置されているのが原作の持ち味。つまり、本作では深い意味を持たない事柄でも描かねばならないことはあるし、もちろん本作の中で重要な意味を持つエピソードはしっかりと入れなければならない。いっぽうで原作にないことを出せないし、省略できることを省略する(ポリジュース薬開発の苦労とか)必要があるし、かといって省略ばかりではダイジェスト的になってしまう……。そういったバランス感覚がハリ・ポタ映画には求められているといえる。
 このあたり、ウィーズリー家の時計、フルーパウダー、屋敷しもべ妖精の境遇、ハグリッドの過去やアズカバンへの言及、先に述べた新しい登場人物の扱い、ホグワーツの歴史、校長室のデザイン……など、シナリオの段階でかなり心を砕いて盛り込んだことが伝わってくる。しかも、教科書の購入、ロンの折れた杖、空飛ぶ自動車、マンドレイクなど、出てくる要素がみな何らかの意味を持つ密度の濃いストーリーを2時間半程度にまとめたバランス感覚はお見事だ。

 ただし、説明口調のセリフが多いのは、原作からの制約を受けているとはいえ残念。また恐らくは「演じるのも観るのも子どもだから」という配慮からだろう、言わずもがなのセリフ、画面で見せていることをわざわざ説明するセリフも頻出していた。

 映像面で、残念なのはクィディッチの試合。卓抜したカット割りと編集とによって、せっかくスピーディかつ面白く展開するシーンを作り出しているのに、合成臭さが鼻につく。また、これは1作目・3作目にもいえることだが、プリベット通りにあるダーズリー家の「いかにもセット」っぽさも、そこがマグルの世界の象徴的場所であることを考えれば、ロケーションを多用するなどしてホグワーツとは明らかに異なる絵を作り、「僕らの世界との地続き感」を出すべきだったろう。
 が、全体としては、カメラを縦横に動かし、照明にも凝って、ホグワーツの広がりや各人の位置づけを示し、恐ろしげな雰囲気を出し、画面を単調にしないことに注意が払われ……と、映像によるイメージ作りはまずまず成功している。ハグリッド帰還の際、ハリーとロンを望遠レンズで抜いて周囲から浮かび上がらせた絵は感涙モノだし、決闘クラブのシーンも緊迫感たっぷりに展開する。

 原作シリーズ5作目の『不死鳥の騎士団』を読み終え、ハリ・ポタワールドが恋しくなって観たのだが、音楽、美術、撮影、キャスティングなどを含む総合的な演出で、ハリ・ポタ世界を上手に再現していることに、あらためて感心させられる。原作から離れることも面白さを削ぐこともなく、シリーズ中では意味合いも人気も(たぶん)高くない『秘密の部屋』を、これだけしっかりとまとめ切って、次回作以降へつないだことは十分に評価できるし、感謝もしたい。

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