茄子 アンダルシアの夏
監督:高坂希太郎
出演:大泉洋/筧利夫/小池栄子/平野稔/平田広明/坂口芳貞
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸4/技3
【灼熱のアンダルシア。自転車ロードレースの、ある1日】
自転車ロードレース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」。ペペが属するチーム・パオパオビールは、スポンサーにアピールすべくステージ優勝を狙う。場所はペペの地元・アンダルシア、兄アンヘルとペペの元恋人カルメンの挙式当日。ペペはチームメイトのサポートと牽制のため果敢に集団から飛び出すが、後方でアクシデント発生、チームからの指示は「そのまま勝て!」に変わる。挙式を終えた親族の目前で、ペペはゴールを目指す。
(2003年/日本/アニメ)
【後味の良さを残すが、アニメとしての楽しさがもっと欲しい】
わずか47分の作品。コンパクトにまとめられていて、長い長いロードレースの断片としては十分な完成度にあるとは思う。いっぽうで、やはり短さゆえのボリュームのなさが痛い。
たとえば作品の大半を占め、売りものでもあるレースシーン。なるほどヘリから見下ろした映像や選手の動きなど、よく再現できている。が、再現に心を砕くあまり“弾ける”ところがない。「アニメだから」可能なはずの表現が少なく、アッサリとした印象を与えるのだ。スピード感を再現しようとしても、どうしてもナマのレースの体感速度には敵わないはず。ゴール前のクライマックスに「線を太くする」という絵的工夫が見られるが、こうしたアニメならではのダイナミックな動き・演出を、もう少し取り入れても良かったのではないか。
結婚式やパーティーのシーンにしても、ごくごく真っ当ではあるが、おとなしすぎる感がある。
ストーリー的には、ペペや兄アンヘル、カルメンらの人間関係はこの程度のアッサリ感のほうが、かえって「お互いにお互いが好き」という雰囲気が出ていていいとは思う。また、ほとんどレースをしているだけのペペなのに、自分がまだ何者なのかわからずにあくせくしている様子を示してくれる。が、ライバルたちのキャラクターやチームが置かれている状況など、レースの面白さについては、やはりもう少し時間をかけて、かつ映像的に示すべきだったろう。説明のためのセリフに頼るなど、短さの弊害を解消し切れていない。
収穫は色彩感覚。アンダルシアに広がる空のブルーの、なんと濃密なことか。荒地の赤茶けた様子も、温度や渇きが伝わってきそうだ。こうした色彩の良さを印象づけるべく、大地と空との画面比率などレイアウトも凝っている。
キャスティングも、意外といい。大泉洋は、これだけで終わらせるのはもったいないほどの味。筧利夫も堅実で、やや無理やりのブッキングに思える小池栄子もでしゃばらずに仕事をこなしている。フラメンコなど音楽も画面やストーリーとマッチしている。
観るべき点も多いし、丁寧に作られていることもよくわかる。後味の良さを残す作品だ。それだけに余計、もっと「アニメとしての」楽しさを加えてくれていればなぁと感じてしまう。
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