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2004/12/26

ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間

監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン/イアン・ホルム/ショーン・アスティン/ショーン・ビーン/ジョン・リス=デイヴィス/オーランド・ブルーム/リヴ・タイラー
30点満点中17点=監3/話4/出3/芸3/技4

【闇の軍勢に追われつつ、旅の仲間は滅びの山を目指す】
 魔王サウロンは世界を支配する“1つの指輪”を作り出したが、戦争に敗れる。遥か後、ホビット族の若者フロドの手に指輪は渡った。指輪を取り戻すべく跋扈する闇の軍勢に追われながら、フロドと庭師のサム、ピピンとメリー、魔法使いガンダルフ、人間の剣士アラゴルン、ドワーフのギムリ、エルフのレゴラスらは、指輪を葬ることのできる唯一の場所、滅びの亀裂を目指す旅に出る。しかし指輪には、人を虜にする力があった。
(2001年/アメリカ・ニュージーランド)

【欧州風ファンタジーを中華の手法で料理した!?】
 最初の出会いは中学生だか高校生だかの頃。原作を手にして、あまりの読みにくさに10ページほどで白旗を揚げた。
 次が本作の公開時。「評判は高いのに、どうして予告編や紹介番組で観る映像は『ツマラナさそう』と感じるのだろう」と疑問を抱きつつ劇場へ足を運んだ。結果、またも撃沈。
 まず、これだけの波乱万丈物語にも関わらず退屈を感じた。加えて、こんな具合にブツっと終わるとは思っていなかった。後ろの席でオニーチャンが「え? 終わり?」とうろたえていたのを覚えている。「常識では考えられないところで『つづく』になる三部作ですよ」というアナウンスが十分になされていなかったわけだ。
 そんなわけで、三部作がDVDで出揃ったいま、三度目の正直。

 いや、お話としてはまずまず面白いと思う。かなり重要な事象をセリフだけで説明してしまっている部分もあり、長大な原作(完読した人によれば、大部分が『歩いているだけ』らしいが)を苦心して省略したことをうかがわせ、どちらかといえばTVシリーズ向きの題材かも知れない。が、深く心情まで描く場面は少ないのに人の心を蝕む指輪の魔の力を伝えようとするなど、たとえ原作ファンには物足りないとしても要所を押さえた質のいい脚色なのだろう。

 もっと剣や魔法、生物にバリエーションがあればなぁとも感じるが、煩雑にならぬ程度に種族の多様性を盛り込み、善と悪との対立を軸としながらも一筋縄ではいかぬ設定と展開、それなりに山や谷もある。
 登場人物たちがそれぞれに弱さや過去を持ち、己の中の悪や運命に抵抗しながら使命を果たそうとするあたりは、ハリ・ポタや『ラプソディ』シリーズ(エリザベス・ヘイドン著)といった純ファンタジーだけでなく、『スターウォーズ』サーガにも影響を与えているのだろうと思わせる。
 
 配役も良。何人か大御所もいるが、公開当時、名前だけで客を呼べそうなのはリヴ・タイラーとケイト・ブランシェットくらいだったはずで、そのふたりも登場シーンはごくわずか。「またコイツかよ」と思わせる顔がなく、ジョン・リス=デイヴィスあたりはいわれるまで気づかないメイクだったりする。それがかえってよかった。誰かが演じているというより、実在のホビットや騎士として目に映り、異世界へと誘ってくれる。
 CGのクォリティは高く、迫力あるシーンも多い。勢いにまかせるだけでなく、きっちり計算されたカット割りであることもうかがえる。特に坑道での戦闘シーンは、あれだけスピーディで多くの人物が入り混じっているのに「何がどうなっているのか」がわかるほど整理されている。

 が、どうにも画面レイアウトが単調だ。
 カギはホビット族。その小ささを示すために、まさかマンチキンにするわけにもいかず、アングルを工夫し合成をし、大きめの服を着させ、スタンドインを使うなどして頑張っている。ビルボ・バギンズ役のイアン・ホルムをあれだけ小さく見せるのだから、たいしたものだ。
 しかしホビットと人間、ホビットと魔法使いが絡むシーンで、手間ひまを省いた場面も散見できる。同じカットにサイズの異なる種族を配置する面倒を避け、それぞれの表情を交互に映し出して会話をさせている。まずこれが単調。しかも、バストショット~顔のアップがやたらと多い。アップ、アップ、アップ、景色、アップ、アップといった配分。ガンダルフあたりにはココぞという決めゼリフがあり、そういう場面でこそアップは生きるはずだが、しじゅう顔が大映しになっているのでメリハリを削ぐことになり、退屈を感じる一因となっている。

 クレーンを多用し、空撮も挿入し、右から左、手前から奥、上へ下へとカメラは豪快に動く。CGとの合成にもあまり違和感はない。それはいいのだが、いたるところで同じように「スケールあるでしょー」という画面を作っているため「あ、この絵柄は15分前にも観た」ということになってしまう。全編がクライマックス、という感じ。
 ブタもエビも野菜も、どんな素材でも鍋で炒めてガラスープとオイスターソースで味をつけ、大皿で供される中華料理のようなイメージ。中盤あたりで「おえっぷ」と満腹になってしまう。

 また劇場公開時の字幕はかなりお粗末だったそうで、それも退屈だった要因かも知れない。今回は吹替え版にて観賞。個人的にはアラゴルンの大塚芳忠とボロミアの小山力也を入れ替えて欲しかったなとか、いまさら内海賢二はないだろう、などと思うが、全体に違和感はなく、かなり理解も進んで「二度目のほうが面白かった」と思える稀有な例になってくれた。先の展開も気になるので、三度目の正直は成功だったようだ。

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