ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド/イアン・マッケラン/ヴィゴ・モーテンセン/ショーン・アスティン/ジョン・リス=デイヴィス/オーランド・ブルーム/リヴ・タイラー/アンディ・サーキス/バーナード・ヒル
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸3/技4
【旅路の行き着く果てに、中つ国を割る戦争が待つ】
ピピンとメリーを救い出すべく、アラゴルン、レゴラス、ギムリはオークたちを追うが、道中で闇の軍勢がローハンへの侵略を開始したことを知る。ローハンの王セオデンはガンダルフによって正気を取り戻すものの、迫り来る軍勢はあまりに強大、ローハンの民はヘルム渓谷へと逃げ込む。いっぽうフロドとサムは、指輪を狙うスメアゴルを捕らえ、その道案内で滅びの山を目指す。だが、フロドの心は指輪に魅入られようとしていた。
(2002年/アメリカ・ニュージーランド)
【改善点も多く、終末へ向けての間奏の役割を果たす】
前作『旅の仲間』と比べ、いくつかの点で作りが改善されている。
第一にサウンドトラック。前作では鳴り止むことなく響き、全編が同じテンションに感じられてしまう原因となっていたが、本作ではエルフの軍勢の登場シーンなど、使いかたがこなれてきた感じだ。
カメラワークや画面構成は、相変わらずどのシーンも大仰だが、それに観る側が慣れてきた。またアラゴルンと、エルフの姫アルウィンやローハンのエオウィンとの関係に焦点が当てられ、これらはあまり顔面アップに頼ることなく描かれる。フロドやサムらホビット族が、人間やエルフと別行動になった展開が画面作りの点でいい方向に作用したようだ。
クリーチャーも、魔狼、オルファント、エントなど多彩になってきた。特にスメアゴルの造形や表情はお見事。また前作では「どの程度まで遠くへ行くのか、どのくらい歩いたのか」が曖昧だったが、渓谷や荒野、森、沼、廃墟など地形のバリエーションが増え、地図で位置関係が示され、空間の広がりもより感じられるようになった。
飽きさせない展開にも気を遣っている。前作でも古(いにしえ)の戦争からスタートするなど、つかみはオッケー、要所要所でグっと惹きつけるよう配慮されていたが、今作もガンダルフとバルログの戦いから始め、ヘルム渓谷への道中には魔狼との戦闘シーンを挟み(レゴラスが馬に飛び乗るカットなど、スピーディで見ごたえがある)、ラストは夜間の城攻めと変化に富んでいる。
ただ、ストーリーとしての進展は前作より緩やかで、見た目ほど内容が詰め込まれているわけではない。エルフのマントの機能やファンゴルンの森の登場、いつの間にか死んでいるローハンの王子など唐突に感じる描写や展開も多く、ローハンとその都エドラスも、壮大な自然を背景にしている割にはどれほど栄えている国なのか、そのスケールがよく伝わらない。このあたりはもう少し描き込んでも良かっただろう。
代わりに、女子どもが駆り出される恐怖、父が子を葬る寂しさなど戦争への不安感と焦燥感を描こうとしたのかも知れないが、それが、より描かなくてはならないポイントやテーマ性を曖昧なものにしてしまっている。
たとえば人間関係。前作でもそうだったが、なぜそこまでガンダルフが敬意を持たれるのか、旅の仲間の信頼関係やフロドとサムの絆、物分りの良すぎるファラミアなど、ストーリーが駆け足になってしまい伝え切れていない事柄が多い。それぞれの心の移り変わりや、現状に対する意識の変化にこそ、時間を割くべきだったろう。このあたり、たとえばTVシリーズ2クール、計20時間くらいかければ自然と観客に浸透したのではないだろうか、と思える。
全体として、完結編の大戦争にいたる間奏といった趣。が、これだけデカい話なのだから、できればソナタの第二楽章のように、人間関係についての細やかな描写をより多く取り入れて欲しかったものだ。
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