将軍の娘/エリザベス・キャンベル
監督:サイモン・ウェスト
出演:ジョン・トラヴォルタ/マデリーン・ストー/ジェームズ・クロムウェル/ジェームズ・ウッズ/ティモシー・ハットン
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【基地内で殺された将軍の娘。事件の裏側に潜むのは……】
一糸まとわぬ姿、手足はテント用の杭とロープで地面に固定され、首には絞められた痕。米軍基地内で死体として発見されたエリザベスの父は、政界への進出も噂されるキャンベル将軍だった。軍の犯罪捜査官ブレナーとサラは調査を始めるが、スキャンダルを恐れる上層部から「物事の処理には、正しい方法、誤った方法、そして軍隊の方法がある」とクギを刺される。やがて、エリザベスのおぞましい過去が明らかになっていく。
(1999年/アメリカ)
【いくつかの配慮・工夫はあるが、印象や感想が湧いてこない】
波や山場・見せ場の少ないストーリーだ。伏線もなく、驚嘆もない。証言や調査によって新事実が浮かび上がり、それを追うと次の事実……。どこかで見たことのある展開だなと思ったら、何のことはない、テレビゲームの推理アドベンチャーの手法だ。
淡々とした流れを、少しは面白く見せようという工夫はある。冒頭で武器の横流し事件の潜入捜査、その容疑者との撃ち合いを描き、とりあえずは画面に引きつける。サラが「明らかにデッチ上げだろう」と観ている者にはわかる証拠を参考人に突きつけて情報を引き出す場面では、それがやっぱりデッチ上げだと示す際の処理にニヤリとさせられる。
サラが襲われるシーンでは犯人の指に銀の指輪が光り、通常なら「指輪をしているのは誰だ」という調査が挟まれるところを、いきなり指輪の主を尋問するところまで素っ飛ばすなど、テンポアップのためのいい手法もある。判明したことを丁寧に会話などでなぞり、事件の推移や新事実をわかりやすく観客に伝えようとする配慮もある。
が、どうにも浅くて薄い。エリザベスの苦悩は伝わらず、軍の排他的な雰囲気もそれなりでしかなく、副官が将軍に示す忠誠の思いも不十分。
なによりブレナーが「軍隊の方法」より「正しい方法」に固執する動機が描き切れていない。これまでさんざん軍隊のやりかたに煮え湯を飲まされてきたとか、敬愛する将軍に対する複雑な思いとか、そうした行動の背景をしっかりと示すべきだった。ブレナーとサラが元婚約者どうしだったという設定も、どうやら脚色・編集の段階でエピソードの大半が削られたらしく、ストーリーに何ら生かされていない。
絵作りはキッチリしているし、余分な描写は省いて山場が少ないくせにテンポよく進むのはいいが、浅さ・薄さゆえに事件の深刻さや各人の心情がしっかりと響いてこないのが痛い。
結果、観た後に「ここが良かった」「自分はこう思う」といった印象や感想があまり湧いてこない作品になってしまっている。
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