シュレック
監督:アンドリュー・アダムソン/ヴィッキー・ジェンソン
出演:マイク・マイヤーズ/エディ・マーフィ/キャメロン・ディアス/ジョン・リスゴー/ヴァンサン・カッセル
吹替:濱田雅功/山寺宏一/藤原紀香/伊武雅刀
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【おとぎの世界の冒険譚。怪物がお姫様を助ける!?】
誰もが恐れる賞金首、緑の怪物シュレック。彼が住む沼地に妖精や木の人形たちが押し寄せて、シュレックは大弱り。聞けばおとぎの国の住人たちは支配者ファークアード卿に立ち退きを命じられたという。「囚われのフィオナ姫を救い出せば立ち退きを撤回する」との取り引きに応じ、しゃべるロバ・ドンキーとともにドラゴンの城へ赴くシュレック。無事に使命を果たしたシュレックだったが、姫の身には呪いがかけられていた……。
(2001年/アメリカ/アニメ)
【映画としてはマズマズのデキも、自己満足が鼻につく】
フルCGムービーのマーケットにおけるディズニー&ピクサーの対抗勢力、ドリームワークス&バンガード・フィルムズの作品。ただし両者は、スキルもベクトルも異なり、軍配はハッキリと前者に上がる。
本作で強調されるのは、まず光。ロウソク、たいまつ、木漏れ陽、月に夕焼けに朝陽。それらがモノにおよぼす陰影が律儀なまでに再現される。確かにそれは鮮やかだし、シュレックの肌などテクスチュア(質感)の処理も素晴らしいと思う。が、画面の中で浮いてしまっている。コップに注がれる牛乳のカットもそうだが、ストーリーとの関わりが薄く、ただ「こんなことまでできちゃうんだぜ」というアピールと自己満足のためだけの技巧が多すぎるのだ。
技法とストーリー・演出との融合、すなわちアニメーション映画作りのスキルが「こなれていないな」という印象を抱かせ、スマートなまとまりを見せるディズニー&ピクサー作品よりも劣ると思わせるのだ。
またディズニー&ピクサーがあくまで“アニメ”を作ろうとしているのに対し、本作が目指したのは“映画”のようだ。画面レイアウトは明らかに実写映画を意識したもので、アニメらしさというか、アニメだからこそ可能なカメラワークがあまり見られない。
唯一、ドラゴンが登場するシーンのみ、ドラゴンの浮遊感やスピード感がよく出ていて“魅せる”場面となっているのだが、全体としてドキリとさせるシーン/カットが少ない。おとぎの国の人々は、確かにアニメやCGだからこそ表現できる対象ではあるが、それだけに止まらず画面作りや演出の面でもアニメらしさを大切にし、怪物を主人公に据えた映画としてのハジケた感じをもっと出してもらいたかったものだ。
そうした不満を除けば、エンターテインメントとしてマズマズのデキ。のんびり暮らすシュレックの様子を描いた導入部から、ドンキーとの出会い、格闘、旅、ドラゴンの城からの救出劇、そしてロマンスと、テンポよく流れるようにお話は進み、ドンキーを見てハート型の炎のため息を吐き出すドラゴンなど笑えるカットも散りばめて、エンディングまで飽きさせずに突き進む。
このあたりでは、シュレックが抱く「みんなが俺を怖がるだけ」という寂しさを出し切れていなかったり、ストーリー展開上の重要な場面で立ち聞きという安直な手段を用いたりといったキズがあるが、おとぎ話としてコンパクトに整理されてはいる。
キャスティングも、ネームバリュー優先だが、まずは適材適所。日本語吹替え版も同様に名前だけが勝ったものだが、浜ちゃんには無理に標準語を使わせる愚挙は犯さず、関西弁でシュレックの“はぐれモノ感”を出せていたように思える。
アニメではなく「フルCGの映画」を突き詰めるためのファーストステップとしては、まぁこんなものだろう。幸いなことに興行的には、パート2が作られたくらいだから大成功。この勢いに乗って順調にスキルアップを果たし、いままで見たこともない世界を構築してもらいたい。
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