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2005/01/03

ショーシャンクの空に

監督:フランク・ダラボン
出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン/ジェームズ・ホイットモア/ギル・ベローズ
30点満点中21点=監4/話4/出5/芸4/技4

【刑務所内で出会ったふたりの男。嵐の夜に何かは起きる】
 妻殺しの汚名を着せられショーシャンク刑務所に投獄された元銀行員アンディは、同じく終身刑の“調達屋”レッドと次第に心を通わせるようになる。看守たちの資産管理を請け負い、図書館を整備し、次第に刑務所には欠かせない存在となっていくアンディ。そこへ「真犯人らしいヤツに会った」という新入りトミーがやってくる。所長はこの話を無視し、レッドも「ここでは希望は禁物だ」とアンディを諭すのだが……。
(1994年/アメリカ)

【演出、展開、演技、それぞれが上質な良品】
 スティーブン・キングの絡む作品はアタリハズレが大きい。が、先制ホームランとなった『スタンド・バイ・ミー』(ロブ・ライナー監督)やデッドボールに端を発する乱闘劇『シャイニング』(スタンリー・キューブリック監督)など、幸運にも凡退に終わらなかった打席をより多く目にしている。小説では『死へのロングウォーク』が、『バトル・ロワイアル』(高見広春著)の原点とも呼ぶべき理不尽状況モノで、個人的にはツボだった。3割を大きく超えるアベレージを残している、との実感がある。
 本作もまた鮮やかなホームラン。原作は短編らしいから、コーチ役(脚本と監督)のフランク・ダラボンの手腕も大きかったのだと思われる。

 所長室の壁にかけられた刺繍、聖書、女優のポスターなど数々の小道具が、初登場のシーンでニヤリとさせるだけでなく、その後にも大きな意味を持って機能してくるのが、まず小粋。伏線の張りかたが絶妙に上手い
 そうした各シーンを、印象的な絵作りで映し出す。囚人たちの日常生活や会話など、どうということのないシーンでも、人物の配置、アングル、照明の当てかたと露光など「印象的かつ説得力に富んだ画面」にかなり気を遣っているように思える。看守たちが新入りのデブを虐待する場面では、何もかもをクッキリと映し出すのではなく、闇と光のコントラストを強調した画面で、刑務所という極限状況と、そこに入れられることの痛々しさを表現してみせた。
 刑務所を過不足なく再現した美術、過剰になることなく場面を彩る音楽も上質だ。
 もちろん、ストーリーも面白い。下手をすると前半と後半のバランスが大きく崩れてしまう内容なのだが、前述した小道具の使いかたの上手さもあって鮮やかに展開していく。

 演技陣も極上で、筆頭はレッド役のモーガン・フリーマン。こんなに上手いとはこれまで気づかなかった。『セブン』(デヴィッド・フィンチャー監督)の3倍は渋い。ファーストシーン、仮出所の査定に臨んでモジモジと帽子を持て余すところからもう「あ、この映画はこの人を観るだけでも価値がありそう」と思わせる。
 いつ、どの作品を観ても暗いティム・ロビンスも適役、ブルックスを演じるジェームズ・ホイットモアやトミー役ギル・ベローズも、個人的には「こんなとこにいた」という感じで楽しい。人物が少しずつ年老いていくのも違和感なく味わえる。

 欠点・疑問点も3つ。
 まずナレーションが多すぎる。観ればわかることまで語っている。オープニングからエンディングまでレッドによるナレーションで流れと一貫性を作り出そうとした意図はわかるが、だとしたら途中、ブルックスによる語り(手紙)が入るのは視点が揺らぐこととなり、余計だ。
 長きの服役を終え、仮出所の時を迎えるブルックス。重要な役だが、仮出所前の戸惑いや出所後の日々は不用だったのではないか。後から「ブルックスが数十年ぶりにシャバへ戻り、何を感じたか」を描く機会はあるわけだし、またそうしたほうがより切実に、刑期を終えた人間が置かれる状況や、その状況への恐怖を訴えることができただろう。
 その恐れ、人を人でなくしてしまう刑務所がレッドをどう変えていったかを十分に描けていなかったのが3つめ。これもナレーションを減らし、鉄条網や壁を見上げる姿や、ひとりで沈み込むレッドの様子を、静かにジックリと映すだけでクリアできる課題だったはずだ。

 このあたりが気になったため点数も少し低くなったが、完成度は高く、ファンの多い作品であることは十分に理解できる。
 たぶん、刑務所内で生きながらえていくためには、希望や執念だけでは不足で、狡猾さや要領の良さも必要だろう。深夜の車中、アルコールにまみれたアンディがアップになるオープニングカットから、あの印象的なラストカットまで、どれほどの月日が必要だったか。爽快さだけじゃない、犠牲者としてのアンディが、長い月日を乗り切るために何かを捨て、けれど大切なものだけは捨てなかったアンディが、そこにいるのだ。
 考えさせられると同時に、観てよかったと思わせる映画である。

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コメント

私の一番のお気に入りの作品です。見終えた後の、あの爽快感がたまりません。
まぁ、欠点・疑問点もありますが、評価していただいて、うれしいです。

投稿: distan | 2005/04/27 01:56

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受信: 2005/09/09 15:13

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