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2005/01/28

ドーン・オブ・ザ・デッド

監督:ザック・スナイダー
出演:サラ・ポーリー/ヴィング・レイムス/ジェイク・ウェバー/メキー・ファイファー/マイケル・ケリー
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4

【襲いかかるリビング・デッド=ゾンビの恐怖】
 感染した“ヤツら”に噛まれると死に至り、やがて目覚めると、その者も凶暴化して見境なく人を襲い始める……。社会がパニックとなる中、看護婦のアナも隣家の少女ヴィヴィアンに襲われる。かろうじて家を脱出したアナは、道中で出会った警官のケネス、アンドレとルダの夫婦、マイケルとともにショッピング・モールへと逃げ込んだ。だがそこも、安息の地ではなかった。70年代の名作ホラー『ゾンビ』のリメイク版。
(2004年/アメリカ)

【悪くはないが、これは恐怖映画ではない】
 監督はCM出身。増感したようなショッピングモール内の映像、奥行きのあるアングルなどスタイリッシュな絵作りに出自を感じ取ることはできるが、いたずらにヴィジュアル優先に陥ることなく、しっかりとストーリーを追う手堅い作りとなっている。むしろ、舞台を限定し、その中で起こる出来事をカチっとまとめてあるところなど、「限定した時間・空間内に情報を盛り込む」というCMならではのスキルが効果的に発揮されているのかも知れない。
 特に、短いカットの積み重ねと、血しぶきが飛び頭が弾ける残酷カットのシャープさは、なかなかのもの。ゾンビに襲われるシーンはいずれもスピーディに展開し、思わず息をのむ。「ほーら、来た来たぁ」とヘラヘラしながら観ることのできる、いわば“楽しめるホラー”だ。

 つまりは、恐怖の絶対量が不足している、という欠点もあるわけだ。
 ゾンビ映画の鉄則として「襲われる恐怖、追い詰められる恐怖、自分もゾンビ化してしまう恐怖、愛する人がアンデッド化する恐怖、誰が敵なのかわからない恐怖、極限状態に置かれることによって信頼関係が破綻する恐怖」を描かねばならないとした。
 本作でも確かに「襲われ」て「追い詰められる」し、「極限状態に置かれて信頼関係が破綻」しそうにもなる。「愛する人がアンデッド化する」というエピソードも挿入される。また襲撃の合間には静かなシーンも作られていて、メリハリを効かせて怖さを増幅させようという配慮も見られる。
 が、それらは“恐怖”に至らず、せいぜい“ハラハラ”のレベルにとどまっている。オリジナルであるロメロ版には、恐怖と悲しみとは背中合わせなのだなぁと痛感させられるシーンがあったが、そうしたインパクト大の場面もない。

 逃げ込んだ仲間の中に噛まれた者が混じっていて、それを庇おうとする者がいたり、グループ内で恋仲となるカップルがいたりと“お約束”を踏まえているが、ディテールの描き込みもまた不足気味だ。たとえば主人公アナとマイケルが惹かれあうという展開など、少し唐突で、お約束を網羅することに執着しすぎて物語が表面的になってしまい、「きっちりとストーリーは進むが、ただそれだけ」という印象が強い。
 8時になったら自動的にショッピングモールの明かりがつく、といった本筋とは関係のない設定・描写もあって、そのノンビリさ加減も恐怖の不足につながっている。
 本作では人々がゾンビ化する理由=「なぜ」の部分を省略しているのだから、なおさら有無をいわさぬほどの恐怖を詰め込むべきだったはずだ。

 悪い映画ではない。が、恐怖映画でもない。じゃあ何かと問われればゾンビ映画。ゾンビ映画のカタチだけは踏まえているが、それ以上の位置には到達できなかった、という作品だ。

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