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2005/02/26

救命士

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ニコラス・ケイジ/パトリシア・アークエット/ジョン・グッドマン/トム・サイズモア/ヴィング・レームズ
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4

【救命士の苦悩と葛藤】
 フランクは救命士。毎夜救急車を駆り、銃撃事件の被害者や酔っ払いなど患者たちのもとへ急行、応急処置を施し、病院へと搬送する。だがホームレスの少女ローズを救えなかったことに自責の念を抱き、それ以来、ローズの亡霊に悩まされるとともに“誰も救えない”というスランプにも陥いっていた。そんな折、フランクが担当した心停止の男がかろうじて命を取り留める。フランクは男の娘メアリーと親しくなるのだが……。
(1999年 アメリカ)

【救命士の仕事を体感する】
 ある救命士の3日間を描いた、つまりは切り取り型の作品。しかも救急車内や病院のロビーなどごく狭い範囲で物語は展開し、ほとんどの場面が夜という、クローズドな雰囲気の映画だ。
 その“閉じた雰囲気”を一貫して保ったことが効いている。救命の現場で主役となるはずの医師や看護婦を脇役に追いやり、病院モノにありがちな「命の尊厳」といったテーマに踏み込むこともなく、あくまで救命士フランクの苦悩を中心に据えることで、この職業ならではの、ちょっと特殊な日常を遺憾なく描き出している。

 そこに救いはない。フランクとメアリーがどのような将来へと向かうのかも判然としない。ドンっと心に突き刺さるものもないし、モヤモヤも晴れない。
 が、どうしてもドップリと描きたくなる世界とストーリーであるにも関わらず、ことさらに重くなりすぎていないのが、いい。
 大砲というより機関銃のイメージ、といえばいいだろうか。常連の患者や精神を病んだもの、さまざまなタイプの同僚など個性的なキャラクターを配しつつ、“救えるかどうかギリギリの現場”という高いテンションを維持し、フランクの内面をズンと掘り下げることよりも、その雑多かつハイテンションの中に毎日置かれることによる疲労感を観客に押し付けるのである。
 そりゃあマイっちゃうよなぁと、つい思ってしまうじゃないか。

 ただニギヤカなだけではないギリギリまで張り詰めたテンションの高さを作り出すのが、カメラワーク。救命士の仕事場という極限状況に漂う緊迫感を上手く切り取っている。患者をストレッチャーで運ぶような緊急時だけでなく、勤務時間外の場面でも割と大仰にカメラは動くのだが、フォーカスやフレーミングがブレることなく、ビシっとクリアかつシャープに対象物を捉えて、ピンと尖った空気や格調を感じさせる絵だ。
 静かなシーンではバストショットが主となって大人しい画面、かと思えばフランクが高揚している時には早送り、はたまた沈み込んでいればスローモーションと緩急自在にスピードを使い分けて、作品全体に抑揚をもたらしている。

 われわれの日常と隣り合わせにある、というか、すぐそこに現実に存在する救命士の仕事場を体感することができる、フランクとともに極限状態に心身を置くことができる、問いと答えは観た人自らがを見つけ出す、そんな作品といえるだろう。

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