コラテラル
監督:マイケル・マン
出演:トム・クルーズ/ジェイミー・フォックス/ジャダ・ピンケット=スミス/マーク・ラファロ/ピーター・バーグ/イルマ・P・ホール
30点満点中19点=監4/話4/出4/芸3/技4
【殺し屋に雇われた不運なタクシードライバー】
リムジン・サービス社を興すことを夢見るタクシードライバーのマックスは、検事のアニーを乗せて“いい雰囲気”に。次に拾ったのは不動産業者を名乗るヴィンセント。「今晩、5人の客に会う」とマックスのタクシーを借り切るが、彼が入ったビルの窓から死体がドサリ。ヴィンセントの正体はプロの殺し屋だったのだ。深夜のLAを移動しながら、次々に標的を始末していくヴィンセント。なんとか逃げ出したいマックスだが……。
(2004年 アメリカ)
【先を読ませぬ展開、最後まで引っ張るパワー】
まさに正真正銘の巻き込まれ型ストーリー。
この手のお話では「巻き込まれた側の、逃げるに逃げられない状況」をいかに上手く作るかが成功のカギ。その点で本作は、さまざまな状況を織り込んで及第点以上の仕上がりを見せている。
ヴィンセントは5人を始末しなければならないわけだが、1人目はマックスにとって“いきなり”、2人目はマックスが縛られたうえにアクシデントも発生するし、3人目は完全な不意打ち。さらに状況を打破するためのマックスの突発的な行動を挟み、弱みを握られ、撃ちあいに発展し、そしてクライマックス……と、息つく間なく進む。
警官やFBIの動向も挿入し、マックスが機転を利かせて窮地を切り抜ける場面も作り、と、まったく飽きさせず、先を読ませない作りだ。ストックホルム症候群=犯人と人質との友情といった安直な路線をギリギリでガマンしたことも評価できる。
画面から漂う雰囲気もいい。ほぼすべてのシーンが夜、しかもタクシーの中という限られた状況なのだが、露光やアングル、カット割りなどを完璧に制御して登場人物たちが抱える緊迫感をしっかりと伝えてくれる。
どのシーンが良かった、どのカットが印象的だったと特定の箇所はあげられないのだが、それだけ全編に渡って、クォリティの高い画面が作られていた証拠といえる(あ、LA批評家協会賞や英アカデミー賞の撮影賞を受賞しているのか。納得)
ただし音楽は、クラシックからジャズからヒップホップまでと、ちょっと詰め込みすぎの印象で、「やかましさ」が気に障る。
主演ふたりも上々だ。トム・クルーズが「初めての悪役に挑戦」と注目された本作だが、思いのほかハマっている。正直あんまりカッコ良くないし、6年もプロとして飯を食っている殺し屋の割にはだらしないとも思える。凄みも足りないし、もっと掘り下げられるキャラクターだったとも感じる。だが、これらはどちらかといえば脚本・設定の段階でクリアすべきだった問題のはず。トム自身は、この脚本・設定の範囲内でかなり頑張っていたといえるだろう。
マックス役のジェイミー・フォックスも好演。さすがにオスカー・ノミネートだけのことはある。『ダイ・ハード3』(ジョン・マクティアナン監督)のサミュエル・L・ジャクソンとカブってはいるが、大袈裟にならない程度に、理不尽状況下に置かれた焦りや憤りを表現している。
ややアッサリしたオチだが、そこまでの120分間を一気に見せるスピード感は、なかなかのもの。見終えた後、素直に「面白かったね」といえる作品だ。
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コメント
コラテラルはDVDを買いました
あまり関係ないことですが、7年くらい前テレビ愛知(テレビ東京系)の深夜の映画放送を見ていましたら、
CMに「コラテラル」のロードショー案内がありました。
(誰も見たことがない 最も危険なトムクルーズ 冷酷な殺し屋 トムクルーズ コラテラル )←これがナレーションでした
2004年10月23日 先行ナイトショーのテロップ案内で、いまでもVHSテープに残っています
ちなみに、そのときテレビで放送していた映画はリチャード・ギアとキム・ベイシンガーの「ノーマーシィー非情の愛」でした。
「ノーマーシィー」をみていてCMに気付きましたが、「コラテラル」は映画館で見ずにDVDでしたよ...トホホ
>画面から漂う雰囲気もいい。ほぼすべてのシーンが夜、しかもタクシーの中という限られた状況なのだが、露光やアングル、カット割りなどを完璧に制御して登場人物たちが抱える緊迫感をしっかりと伝えてくれる。
そうなんですよ~ マイケル・マン監督の説明によると ロスの深夜をキレイに撮影するため デジタル撮影カメラの最新式にしたおかげで 星を重視した夜景が撮影できたそうです。
だからボクは なにより...コラテラルの雰囲気に合わせて深夜の映画館で見にいきたかったぁ~
絶対この 臨場感は 深夜のレイト・ショーじゃなければ 味わえないもん。 深夜の映画館で「コラテラル」見てきた人なら体感できたはずです。
投稿: zebra | 2012/05/20 09:08
世間での評判は、今イチのようですが、私は、面白かったです。
密室ドラマとは、言えないまでも、ヴィンセントとマックスの関係が面白い。
>ストックホルム症候群=犯人と人質との友情といった安直な路線をギリギリでガマンした
確かに、この二人の距離感が、たまりません。
投稿: distan | 2005/05/16 03:40