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2005/04/19

インファナル・アフェア

監督:アンドリュー・ラウ/アラン・マック
出演:アンディ・ラウ/トニー・レオン/アンソニー・ウォン/エリック・ツァン/サミー・チェン/ケリー・チャン
30点満点中20点=監4/話5/出4/芸3/技4

【潜入捜査官とマフィアのスパイ、ふたりの生きざまが交わる】
 香港マフィアに10年近くも潜入し、幹部にまで上り詰めた捜査官ヤン。いっぽう警察内部でも、マフィアから送り込まれたラウが警部へと昇進していた。が、双方の組織ともスパイの存在に気づく日がやってくる。ボスのサムから潜入捜査官の発見と始末とを託されるヤン。警察内の内偵を任ぜられると同時に、潜入捜査官との連絡役らしきウォン警視を監視するラウ。複雑な立場に立たされたふたりは、どのようにして事態の打開を図るのか?
(2002年 香港)

【スタイリッシュでスピーディな中に味わいもある】
 いきなりアジアン・テイスト満開のオープニングに不安が募る。本編に入っても、音楽の使いかたが(安っぽいコントみたいで)こなれていなかったり、スローモーションのフラッシュバックはレーザーカラオケみたいで、あまりスマートではない絵も多い。
 そのいっぽうで、青みがかった画面を基調にしつつ、夜の香港の薄暗さやネオン、カウンセラーの診療室、警察のオフィス、マフィアのアジトなど質感・空気感・色合いの異なる場面を程よく散らして、全体として見た場合にシーン/カットは変化に富み、スタイリッシュな印象も残す。

 また、一切の冗漫さを排し、一瞬の躊躇もなくスピーディに物語を展開させる手際は、実に見事。複雑な立場に置かれたことに焦りを感じつつ、周囲の目をゴマカシながら任務を遂行するという構成は『追いつめられて』(ロジャー・ドナルドソン監督)に通じるものがあるが、次はどうなるのか考えさせるヒマもないほどの疾走感は、こちらのほうが上。一気にラストまで見せてくれる。
 かといって急ぎ過ぎるわけではない。盗聴器や携帯電話といった小道具を生かし、ふたりの過去を匂わせたりクセのある脇役を用意したりと幅の広い周辺描写にも余念がなく、登場人物それぞれが置かれた立場や私生活などを過不足なく盛り込んでいく。

 特に感心したのが、人と人との“関係”をバランスよく配した点だ。ヤンとウォン警視の「互いに信頼するしかない」という一蓮托生的な信頼関係、マフィアの首領サムとヤンの「実は信頼しているわけではない」という主従関係、サムとウォン警視の「互いを認め合ったうえで、それでも憎い」という敵対関係、ウォン警視とラウとのビジネスライクな上司・部下の関係、ヤンやラウが想い人に寄せる恋愛感情、そして、同じような境遇に置かれているものの決して理解しあうことのないヤンとラウ……といった人間関係を、等分に、しかしそれぞれが薄くならないよう、たっぷりと余韻を残しながら描いている(ハリウッド・リメイク版では、マフィアのボス役としてジャック・ニコルソンの名があがっているようだが、ぜひともウォン警視役にも相当な役者を持ってきて欲しいものだ)。
 唯一、サムとラウの関係が希薄に思えるが、だからこそラウの取る行動には説得力があるといえるのかも知れない。

 面白かったのが、ラウの趣味=オーディオという設定にともなって用意された、ケーブルを替えて聴き比べをするシーン。確かにS/Nの違いを実感できるように作られていてニヤリとさせ、ストーリーの味付けとして機能している。それだけでなく、ヤンやラウの人となりを想像させるエピソードとしても働くし、物語の本筋にも関わってくる。
 細部まで計算してストーリーを作っているなと感じさせる部分であり、本作の優秀さを示す象徴的な場面といえるだろう。

 脚本と演出とのバランスが良く、実に完成度の高い映画である。

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» 『インファナル・アフェア』 [やっくんの言葉]
廉価版で買ってあったDVDで観た。オープニングの若い頃の二人は相変わらず区別がよ [続きを読む]

受信: 2005/04/20 18:59

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