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2005/04/06

ブラザーフッド

監督:カン・ジェギュ
出演:チャン・ドンゴン/ウォンビン/イ・ウンジュ/コン・ヒョンジン
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4

【ただ弟を守りたいがため、兄は鬼神と化す】
 1950年のソウル。靴店を持つことを夢見て靴磨きに励むジンテは、学生である弟ジンソクや働き者の母、婚約者ヨンスンらと幸せな日々を送っていた。だが朝鮮戦争が勃発して事態は一変、徴兵されたジンソクをジンテも追う。一家の希望であるジンソクを守り、除隊させるべく、ジンテは好んで危険な任務に志願し武功をあげようと奮戦する。しかし、鬼神にも思える兄の所業に、ジンソクは不快感をあらわにするのだった。
(2004年 韓国)

【ディテールは頑張っているが、土台が甘い】
 50年代の街並みの再現(いや、よく知らないけど)や、舞台を大きく使うカメラワーク、しっかり表現された暑さ寒さなど、各シーン・各カットには手間ひまがかけられている。50年前の物語から現代へ戻る際の手法など、映画的なサムシングが感じられるところもあって、なかなかに頑張っている。

 弟ジンソクを演じたウォンビンの演技力と存在感も印象的だ。兄ジンテ役のチャン・ドンゴンも全編に渡って“濃さ”を出していたが、それ以上に「理不尽な状況に置かれながらも、自己を見つめ、懸命になって運命に抗おうとする青年」をよく演じていた。悩む青年兵という、特異だけれど表現しやすいともいえる役柄なので得をしているともいえるだろうが、この人、けっこう上手いんじゃないだろうか。

 と、好感を覚える点も多々あるのだが、映画全体の仕上がり・まとまりを考えた場合、どうもスタート(企画立案や撮影時のプランニング)の時点で失敗しているように思える。いや失敗はいいすぎとしても、詰めの甘さを感じてしまうのだ。
 たとえば、戦争を生き延びた人の回想から始まるという構成や、炸裂する弾丸と舞い上がる砂埃で作られる戦場は、モロに某映画の二番煎じ的フンイキ。しかも、オリジナルと比べても暴力的で残虐なシーンが前面に出すぎているように感じるし、カットのつなぎかたには洗練されていない部分が残る。「あ、あれ、やってみたい」という熱意が空回りしちゃった、とでもいうか。

 ストーリーにも、ちょっと難がある。兄弟愛が前提の物語なのだが、高校生にもなったジンソクの手を兄貴が引っ張ってじゃれあったり、アイスクリームを譲り合ったりして、ちょっと気持ち悪い。ジンソクの「秀才で一家の希望」とか心臓が弱いという設定も、伝え切れていなかったり生かし切れていなかったり。兄ジンテについても、たとえば「弟を守ることが、イコール彼のアイデンティティ」といった掘り下げがなく、どうしてそこまで必死になってジンソクを庇い続けるのかが曖昧なままストーリーが進んでしまう。
 ジンテの婚約者ヨンスンのキャラクターも薄い。兄弟が戦場からソウルに戻って話が破綻しはじめるタイミングで再登場し、話をさらにややっこしくする役割を担っているので、なんだかジンテの怒りを増幅させるための道具として扱われている感もある。イ・ウンジュ、綺麗な人なんだけれどなぁ。合掌。

 お金と手間ひまをかけて迫力とテンポを作り出すことに力を注いだ。そのことには成功した。見どころの多い映画に仕上がっているとも思う。けれど、トータルの完成度で考えると、ストーリー展開や、お話の前提となる部分に「?」がいくつも残っている、という作品だ。

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