ビッグ・リボウスキ
監督:ジョエル・コーエン
出演:ジェフ・ブリッジス/ジョン・グッドマン/ジュリアン・ムーア/スティーヴ・ブシェミ/デヴィッド・ハドルストン/ピーター・ストーメア
30点満点中14点=監3/話2/出3/芸3/技3
【ロスの街で起こった、奇妙な誘拐事件】
失業中のデュードは、同姓同名の大富豪と間違われ、チンピラどもからリンチを受ける。「お前の妻バニーが借りた金を返せ」と。これをネタに富豪の“ビッグ・リボウスキ”を強請ろうとしたデュードだったが、バニーが何者かに誘拐され、身代金の受渡し役を富豪から頼まれる。ところがデュードのボウリング仲間ウォルターの暴走やら、富豪の娘モードの思惑などが絡み合って、事件は思わぬ方向へと転び始めるのだった。
(1998年 アメリカ)
【説明しにくく感想もわきにくい捉えどころのない作品】
ボウリングの球のクローズアップやネオンサインなどを生かしたスタイリッシュな映像と、ボブ・ディランやイーグルスなどアメリカ的な音楽とを用いて、夜のLAに独特の世界を作り出す。どこかブラックで、どこかアングラな雰囲気は、この監督ならではのものだ。
かといってスタイル・オンリーの退屈な内容ではなく、ジョン・グッドマンが演じるウォルターとスティーブ・ブシェミによるドニーの意味がありそでなさそな掛け合いなど、オフビートなユーモアで全編を包みながらも「この先どうなるの?」という転がり型のストーリー展開を飽きさせずに見せてくれる。
ストーリーの核となる事件と、偶発的な出来事が重なる展開と、クセのある登場人物たち。これもまたコーエン兄弟お得意のスタイル。
いいかたを変えれば「それしかできんのかい?」ということになる。
ま、スタイルが確立しているのは悪いことではないのだが、本作はどうにもイライラさせられる雰囲気を持っている。原因はたぶん、主役であるデュードが何者なのかわからない(あるいは何者でもない)点にある。
お話そのものが、どこへ行き着くのか判然としない転がり型なのに加えて、デュードのキャラクターについてもまた「どこから来て、何を考えて暮らし、どこへ向かおうとしているのか」がまったく明らかにされない。結果、全体が座り心地の悪いものとなって、誰のために、何を、どういう強さで語りたいのかがわからない作品となっているのだ。酔っ払いの、要領を得ないおしゃべり、とでもいおうか。
その曖昧さというか、無為に暮らすデュードという人間に起こった、さして意味のない1つの出来事を、そのまま意味なく描くことが狙いだったのかも知れない。が、その曖昧さ・無意味さの中に“ピン”と響いてくるものが何もなければ、映画そのものもまた無為になってしまう。
決してクズ映画ではないのだが、じゃあ観た後に何かが残ったか、どこがどう面白いのかを他人に説明できるか、となると、お手上げ状態になってしまう、捉えどころのない作品だ。
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