フォー・ウェディング
監督:マイク・ニューウェル
出演:ヒュー・グラント/アンディ・マクダウェル/クリスティン・スコット・トーマス/ジョン・ハナー/サイモン・キャロウ/ローワン・アトキンソン
30点満点中16点=監4/話3/出3/芸3/技3
【友人の結婚式での出会いは、運命? それとも偶然?】
いくつもの“恋”を重ねながら、真剣な“愛”へと至ることのないチャールズ。彼の周りにいるのもまた、愛とは縁遠い男女ばかり。友人の結婚式で出会ったキャリーと一夜をともにしたチャールズだったが、やはり結婚前提の交際に進む気にはなれなかった。数か月後、またも知人の結婚式でキャリーと再会するチャールズ。しかしキャリーは、すでに別の男と婚約していた。ようやく彼女がかけがえのない存在だと気づくチャールズだったが……。
(1994年 アメリカ)
【まとまりの良さは買えるが、インパクトの小ささに不満】
原題『FOUR WEDDINGS AND A FUNERAL』の通り、舞台は4つの結婚式と1つの葬式にほぼ限定される。参列者もほとんど同じ顔ぶれ。出来事とストーリーも、どうということのないもので、小さな映画といえる。
が、小さいなりに退屈させないようスマートにまとめられ、出会いと別離について考えさせる内容となっている。
魅力のひとつとして、絵作りの上手さがあげられる。5つの式の描写は、なにげないように思えて、実は人の動かしかた、カメラワーク、照明などがしっかりと計算されて、それぞれ色合いやニギヤカさの温度が微妙に異なる生き生きとした式に仕上がっているのだ。
チャールズとその友人たちの描き込みも、本来なら不足していると感じるはずなのだが(いや実際、不足している。なにしろ職業とか生い立ちとか各人のプライベートがまったくといっていいほど語られない)、きっとこのストーリーの前も後もパブで飲んだりクリケットなんかを観戦したりしているんだろうな、でも必要以上にベタベタしていないんだろうなという連帯感と距離感が自然と滲み出ていて、なかなかに面白い。
ストーリーの流れの良さと、ほどよい緩急もポイント。特に主人公チャールズの苦悩は、あるときはジタバタと、あるときはユーモラスに、あるときはじっくりと、変化に富むように描かれていて、次の展開を楽しみにさせる。また、神父の言葉、友人代表のスピーチ、知った人と知らない人とが混在するパーティーなど、結婚式や葬式ならではの要素を、5つの式にまたがって関連しあうように配しているのも面白い。ある言葉や出来事が、次の式でも意味を持ってきたりして、ともすれば冗漫になってしまいがちな「5つの式の連続」をユニークに描いている。
そうして、出会いや神前での誓いを疎かにしてはいけないんですよ、待てばチャンスは訪れる、でも待っているだけではダメなんですよというメッセージを、ゆるやかに伝えてくれるのだ。
ただ、キャリー=アンディ・マクダウェルに魅力のカケラも感じられない(グレン・クロースとキャラがかぶっているのを逆手にとったシーンは笑わせるけれど)のが、この映画を高く評価できない最大の原因。単に好みのタイプじゃないというだけではない。他の登場人物以上に彼女が何者なのかまったく語られていないせいだ。なぜチャールズがそこまで思いを寄せるのか理解できないまま話が進んでいってしまうのだ。
彼女だけでなく、各人の背景がクッキリと見えない点や、スマートではあるがガツンと響くセリフ/カットがない点なども、ストーリーの深みを削ぐ結果を呼んでいる。なんというか、自分も彼らと同じ結婚式に出ているんだけれど、彼らと交わることなく、少し距離を置いたところからジタバタぶりを見ている、という感じ。
簡単にいえば、感情移入しにくい作品なのだ。もう少しスパイシーで、インパクトのある場面やキャラクター作りがなされていれば、彼らに近い位置でストーリーを楽しむこともできたはずなのだが。
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