インタビュー・ウィズ・バンパイア
監督:ニール・ジョーダン
出演:トム・クルーズ/ブラッド・ピット/キルスティン・ダンスト/アントニオ・バンデラス/クリスチャン・スレーター
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸4/技3
【長き歳月を生きるバンパイアの、哀しき生涯】
不老不死のまま200年も生き続けているバンパイアのルイ。妻を亡くしてからの自暴自棄の日々、彼に血を分け与えたバンパイアのレスタト、罪のない人の血を吸うことに対する自責の念、自分たちはどこから来てどこへ向かう存在なのかという問い、新たに“仲間”とした少女クローディアとともに生きた長き歳月、欧州のバンパイアたち……。ラジオ番組の題材を探すダニエルに対して、ルイが語った内容は驚くべきものだった。
(1994年 アメリカ)
【カタチは良くできているが、中身となると……】
生涯振り返りモノストーリーの常として散漫になりがちなところを、ギリギリのラインでグっとこらえた。ルイがバンパイアになる経緯からクローディアとの出会いと交流、そして欧州での事件と、印象的なエピソードが澱みなく展開し、飽きさせない流れが作り出されている。ルポライターが主役にインタビューするという構成と、登場人物を絞ったことが奏功しているのだろう。
撮影は、執拗にウエストショット以上の寄りを用いて、やや暑苦しい。そのぶん演技陣のコッテリした芝居を楽しめるわけだが、狂気をたたえたレスタト=トム・クルーズが(楽しみながら演じている感じ)意外とバンパイア役にハマっているのに対し、出ずっぱりのブラッド・ピット(しかも意味なくウンウンと悩みっぱなしだし)は、暑苦しさをひとり背負い込んで損をしている印象。
その寄った画角の中に唯一、少女のクローディア=キルスティン・ダンストだけがフルサイズで収まるのだが、そのせいもあって彼女は実に生き生きと動く(キルスティン自身の演技力も貢献度大ではあるが)。本作における拾いモノだ。
衣装・美術も見どころ。焚き火やロウソク、月の光にボンヤリと浮かび上がるゴシックな世界が、退廃的かつ萩尾望都チックな(ちなみに本映画の原作『夜明けのヴァンパイア』byアン・ライスよりも『ポーの一族』のほうが発表年は古い)雰囲気をジワリと醸し出していて、画面に惹きつけられる。
ただ、お話の内容としては中途半端な感が拭えない。ホラーか、あるいは哀しみに満ちた人間ドラマなのか。そのどちらにしても掘り下げと盛り上がりが不足しているのだ。
まず、恐怖がない。一応はホラーである限り「ゾクっ」とさせてほしいのだが、せいぜいネズミを血祭りにあげるくらいで、恐怖へと直結する描写・演出が見られない。肩甲骨(寒気感知装置)に訴えかけないのだ。
かといって「他人を犠牲にしながら、哀しみとともに生き続ける運命こそが恐怖」というテーマらしきものも、十分には伝わってこない。
確かにルイが絶えぬ哀しみや疑問を抱えているのはわかるのだが、じゃあ何を見つけたいのか、どうありたいのか、どこへ向かおうとしているのか、自死という選択肢はないのか……といった、ルイのアイデンティティに関わる部分がすべて曖昧で、どうやらルイ自身が自分の曖昧さに気づいていないことにもイラついてしまう。
全体として面白くないわけではないのだが、美術面やキルスティンの好演など外観や枝葉の部分、あるいはストーリーの流れといった“カタチ”の部分のまとまりだけが良くて「結局のところ、なにをブラピはウンウンと唸ってたんだよ」という“中身”が曖昧なままで終わってしまう、そんな消化不良の映画だ。
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