12モンキーズ
監督:テリー・ギリアム
出演:ブルース・ウィリス/マデリーン・ストー/ブラッド・ピット/クリストファー・プラマー/デヴィッド・モース
30点満点中19点=監4/話4/出3/芸4/技4
【未来から過去へ。人類滅亡のシナリオを食い止められるか】
細菌によって人類の99%が死滅した近未来。事件の核心を突き止めるため、囚人のジェームズ・コールが1996年へと送られる。カギとなるのは“12モンキーズ”と呼ばれる謎の秘密結社。だがジェームズは精神異常と診断されて病院に収容され、院内で出会った若者ジェフリー・ゴインズの手引きで脱走を図るが、それも失敗。そんな中、精神科医のキャサリン・ライリー博士は「彼は狂っていないのではないか」と感じ始める。
(1995年 アメリカ)
【しっかり作られている。あとは“狂気”さえあれば】
この手の映画でキモとなるのは、原因と結果の関係、誰の言動がどのような事態を引き起こすのかといった、つまりは“ツジツマ”だ。その点で本作は、伏線とその解決とを適度に盛り込んで未来と過去のつながりを過不足なく示し、ライリー博士が事実に気づく過程もきっちりと織り込まれていて、タイムトラベル&パラドックスものとして水準以上のデキ。クライマックス近辺の展開がバレ気味ではあるが、ストーリー全般としては破綻なくまとめられているといえるだろう。
多用される斜めのアングルやスモークなどの視覚効果、キャッチーなバンドネオンの音楽(サウンドトラックの使いかたには練り切れていない感があるが)などで、この監督らしくユニークな絵作り。が、単に1カットずつが面白いだけのヴィジュアル優先には陥っていない。隅々まで計算しつつも微妙にクセのある画面構成と、絶妙の間でストーリーを進める編集とを両立、終始一貫したテイストを保ち、内容にマッチした謎めいた雰囲気を作り出すことに成功している。
ただ、中途半端にメジャー志向というか、ツジツマがわかりやすく作られすぎていて、『未来世紀ブラジル』にあった“狂気”のようなものを感じられなかったのが残念だ。
せっかく現実と妄想の区別=精神の異常をキーワードとして作品内に挿入し、ジェームズが「未来から来たなんて、きっと俺は狂っているんだ」と悩む場面も用意されているのに、そうした狂気をクローズアップして観客に「何が真実なのか?」と悩ませる工夫に欠けている。
またキャラクター設定と演技陣も、ストーリーをダメにするほどのアクを出していないのはいいのだが、逆にいえばパンチ不足で、全体に人物像の掘り下げが浅い。タイムトラベラーとしてジェームズが選ばれた意味、彼の苦悩、ライリー博士の葛藤、ジェフリーの存在意義などはもっとコッテリと、もっとミステリアスに、それぞれの人となりをフォローしながら描けたのではないだろうか。
デキそのものは悪くないのだから、そうした奥深さが加えられていればカリスマ性を放つ映画となったことだろう。
さすがに専門店のカレーは美味しい。でも、もっとスパイシーなものを食べたかったんだよなぁ。そんな思いを抱かせる作品だ。
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