« ペイチェック 消された記憶 | トップページ | 幸せになるためのイタリア語講座 »

2005/06/27

ヴィレッジ

監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ブライス・ダラス・ハワード/ホアキン・フェニックス/エイドリアン・ブロディ/ウィリアム・ハート/シガニー・ウィーヴァー
30点満点中16点=監3/話3/出4/芸3/技3

【森の中の村で暮らす人々。選ぶべき道は?】
 町を離れ、森に囲まれた小さな村で牧歌的に暮らす人々。森に入ってはならない。それが森に棲む怪物たちと交わした掟だが、ルシアスは村人たちを救う薬を買うために町へ行きたいと願い出る。無垢なノアが森へ入っても無事なのだから、敵意がない者には怪物も手出ししないはずだと。“年長者”たちは許さず、折しも怪物の仕業と思われる残酷な事件も続発する。だが、どうしても町へ出なければならない事件が起こってしまう。
(2004年 アメリカ)

【状況を描くことに心を砕いたはずが……】
「シャマランって嫌いなんでしたっけ?」
「単に『アンブレイカブル』がクソ面白くなかっただけ。状況の描きかたが重々しい割に、原因・ネタ・仕掛けがアレだったからね。でも今回、認識を新たにすることができた」
「と、いいますと」
「ハナっから、それが狙いなんだね、この人。いかにして“状況”を思わせぶりに見せるか、それだけのために映画を作っているんだよ」

「この映画でいうと、森に足を踏み入れてはならない、その掟を破るとたいへんなことが起こる、というのが“状況”ですね」
「で、その“状況”の不可思議さを強調するための、あるいは、なぜそうした“状況”が生まれたのかを考えさせるための描写がメインになる。動物の皮が剥がされるという惨い事件が起こったり、“年長者”たちが何か秘密を隠しているようだったり、閉鎖された社会だからキティみたいな妙ちくりんな女性が育ってしまったり、無謀な若者が森の近くで肝試しをしたり……」
「冒頭部、玄関先で見つけた赤い花を急いで土に埋める女性たち、というシーンには感心しました。赤は怪物を呼ぶ色だからと極端に忌み嫌われているわけですが、それが直感的にわかります」
「なにしろ“状況”が特殊だから、下手をすると説明口調になりがち。それをできるだけ避けて『見せてわからせよう』としているわけだ。村と森との境界線も、黄色い旗で示したりね。その点は立派だよ」

「音楽は重苦しく静か、でも時にショッキングに鳴ります。それも“状況”の不思議さを印象づけました」
「撮りかたも、そうだね。ほとんどのカットで、画面の手前にモノ・人、奥にもモノ・人という構図だっただろ」
「そういえば最初から、葬式の参列者の向こうに泣き崩れる父親というカットでした」
「カメラが対象物にスぅ~っと寄ったり、逆に引いたりすることも多い。そうやって奥行きのある絵を作り、画面の隅々を注視させる」
「つい『なんなんだろう、この世界は?』と考えさせられる画面でした」

「ロケーションからして不思議感があるよな。時代設定があやふやで、空や芝生の色合いはちょっとジメっとした感じでスカっとしない」
「たいまつなどの自然光を生かして、闇に何かがいそうな仄暗い夜も作られていました」
「キャスティングにも、同じ狙いがあったんじゃないか。欧米人の細かな見分けなんかつかないけどさ、モロにアメリカっていう役者は少なかったように思うんだけれど」
「ユダヤ系っぽかったり、プエルトリカンだったり」
「ちょっと不思議な感じ。それがまた、フツーじゃない、どこか隔離された世界という雰囲気を増幅させるわけだな」

「で、オチが来ます」
「まあまあじゃないかな。社会の病巣を抉り出す、みたいなテーマ性もあったりして、嫌いじゃない」
「落としっぱなしではなく、どういう道を選ぶべきかという問題提起にもなっていますしね」
「うん。“年長者”は若者たちのために村を守ろうとするんだけれど、それって年寄りのエゴでもあるわけだ。当然、若者には未来への選択肢が与えられて然るべき。でも、誰がどんな選択をするにせよ、そこには結局エゴが介在してしまう。そんなことを考えさせるのが狙いだったのかもな」

「じゃあ、おおむね好感触ですか」
「いや。実はこれ“状況”を描けてないだろ」
「え、これだけ誉めたのに?」
「村人たちの生活・暮らしが見えないんだよ。食事の様子はチラっと出てくるけれど、水や食料の供給源、出産、新しく子供が生まれたら服はどうするのか、子供たちに何を学ばせるのか……。そうしたことが、まったくといっていいほど語られていない」
「でも、このオチ=原因のおかげで、閉鎖された村という“状況”が作られたということをわからせたいだけなら、そのあたりは不要でしょう?」
「つまりは、そういうことなんだ。ひたすら“状況”を思わせぶりに見せることだけに心を砕いて、そこにディテールやリアリティを加えようという意識はサラサラない。結局は『まずオチありき』という価値観で作られたミステリーとして作られているんだよ」
「なるほど。観客もその価値観を嗅ぎ取るから『さぞかし凄いオチなんだろう』と期待しますよね。もともと皆さん、この監督にはそれを期待しているみたいですし」
「ましてや、これだけオモワセブリックな雰囲気を醸し出しているわけだから、もっとショッキングなオチを持ってきて、もっとショッキングに種明かししなきゃダメなんじゃないかな」

|

« ペイチェック 消された記憶 | トップページ | 幸せになるためのイタリア語講座 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42478/4728162

この記事へのトラックバック一覧です: ヴィレッジ:

» ヴィレッジ [いつか深夜特急に乗って]
「ヴィレッジ」★★★★(中劇2) 2004年アメリカ 監督: [続きを読む]

受信: 2005/06/27 19:25

» 映画《 The Village 》 2004年 [お呼びじゃない?]
映画《 The Village 》 2004年 私の勝手な評価 ★★☆☆☆ 期待して観ただけにねー。ちょっと残念。都会から隔離された村の話。主人公のIvy が村を出て町まで薬を取りに行くという話し。Lucius Huntのお母さん役にSigourney Weaverが出演しています。エイリアンであんなに魅力的でしたが、演出のせいか随分ふけてしまいました。 Stuff 監督 M.Night Shyamalan 製作 Scott Rudin/Sam Mercer/M.Night Shyam..... [続きを読む]

受信: 2005/07/22 07:54

« ペイチェック 消された記憶 | トップページ | 幸せになるためのイタリア語講座 »