ゴシカ
監督:マシュー・カソビッツ
出演:ハル・ベリー/ロバート・ダウニー・Jr/チャールズ・S・ダットン/ジョン・キャロル・リンチ/バーナード・ヒル/ペネロペ・クルス
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸3/技5
【蘇らない記憶、少女の霊、傷跡……。私に何が起こったの?】
女性だけが収監される刑務所で囚人たちのカウンセリングにあたる精神科医ミランダは、家路を急ぐ中、雨に打たれる少女を見つける。次の瞬間、彼女は監獄の中にいた。夫でもあり、また所内精神病院の責任者でもあるグレイ博士を殺害した容疑がかけられているのだ。だがミランダは、その夜のことを思い出せない。さらに「ひとりじゃない」という文字がガラスやミランダの腕に浮かび上がり、少女の霊がミランダにまとわりつく。
(2003年 アメリカ)
【たいしたことのない話を完璧に制御してみせた】
「劇場映画というより、FOXあたりのテレビドラマ的なお話ですね。『ミレニアム』の後番組の第1話スペシャル、みたいな」
「オチの付けかたなんか、まさにそうだな」
「あまり怖くありませんし、先も読めます」
「いや、読めた気になっているだけだと思うよ」
「でも実際、真相は、それほど意外なものじゃないでしょう」
「うん。はっきり『たいしたことない話』といえる。でも、それを目くらましするようなハッタリ演出だと、逆にシラケる。だから枝葉に凝らず、ひたすらミランダの苦しむ様子を追うわけだよ」
「ジックリと」
「そうして、観る者に考えるチャンスと時間を与えてくれているような気がする。『あ、そういうことかも』と気づいた数分後くらいに『やっぱりね』となったでしょ。事件が起こる前にミランダとグレイ博士のラブラブなところもちゃんと描いて、なんで彼女が旦那を殺さなくちゃならないんだろうって考えさせるし。そういう意味では誠実な演出といえるんじゃないかな」
「確かにカメラは、ハル・ベリーにベッタリでした」
「シワどころか、髪の毛一本ずつ、毛穴ひとつずつまで映し出してた。彼女が美人で良かったよ(笑)。演技も堅実だしね」
「クロエ役は別にペネロペ・クルスじゃなくても……」
「いや、オープニングがクロエのアップなんだから、それなりの美人女優でないと。やつれた感じも良かったし」
「でも、この映画の最大の特徴は“画面”ですよね」
「明るいところと暗いところのコントラストがシャープで、現像段階で色調を落としたのかデジタルなのか、何らかの処理をして全体に青暗い絵を作り出している」
「作品のテーマや雰囲気に合致している絵作りでした」
「しかも、これだけ暗い画面なのに手前から奥までシッカリとフォーカスを合わせて、どこに何があってどうなっているのかを伝えてくれる。照明と撮影が完璧にコントロールされていると感じたな」
「撮影段階ではセット内に赤いものを極力置かなかったんでしょうね」
「そのぶん、血とか病院の男性スタッフの作業着とかクルマのテールランプとか、赤いものが出てきたときにアクセントとなっているんだよな」
「そうした“見た目の印象”は悪くないのに点数が伸び悩んだのは?」
「やっぱりストーリーが『たいしたことない』からだろう。面白くないわけじゃないんだけれどね。あと、ホラーの割にアクション映画っぽいところもあっただろ」
「ああ、ミランダが運転するクルマが事故を起こす2つのシーンとか、クライマックスとか」
「妙に迫力あるんだよ。サウンドトラックも、画面に合わせて力いっぱい緊迫感を盛り上げるような使いかたをしている。全体としてはジックリした作りになっているぶん、そういう派手なシーンになると面食らって醒めちゃうということもあるね」
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