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2005/06/23

千年女優

監督:今敏
出演:折笠富美子/小山茉美/荘司美代子/飯塚昭三/山寺宏一/津嘉山正種/鈴置洋孝
30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4

【どうしても逢いたい人に逢うための、遥かな旅】
 いくつもの名作を生み出した銀映撮影所が閉鎖されることになる。社長の立花は、ここで撮られた何本もの映画に主演した伝説の女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作ることを思いつき、老いて引退した彼女と会う。千代子がカメラの前で話し始めた半生は、いつしか彼女の出演作のストーリーと交じり合い、現実とフィクションとが混沌としはじめる。が、そこには「あの思い出の人に逢いたい」という千代子の切なる願いが秘められていた。
(2001年 日本 アニメ)

【デキはいいが、類似が強すぎて素直に楽しめない】
「伝説の女性にふたりの男が取材し、そこで語られる驚愕の話は、何百年も抱いていた“あの人に逢いたい”という想い……。これ、どう考えたって星野之宣の『八百比丘尼(はっぴゃくびくに)』だよな」
「監督自身も、類似は自覚していたようです」
「あの話、好きなんだよ。だから逆に、既存の名作と類似性の強いこの映画は素直に楽しめなかったんだよなぁ」
「千代子さんの主演作の“見せ場”と、彼女の私生活・心情が上手くミックスされていて、なんとかオリジナリティを出そうという工夫は見られたと思うのですが」
「実際の話と架空の話がゴッチャになるという構成は、たとえばウォシャウスキー兄弟の『バウンド』なんかのほうが、衝撃的だった。回想の中に聴き手が入り込むっていうのも『アンダー・サスピション』(スティーヴン・ホプキンス監督)のほうが先でしょ。まぁ、入り込んだ人が回想に干渉するってのが、この映画のオリジナリティといえば、そうかな」

「でも、ダメ映画ではありませんよね?」
「語られる内容の突然の変化、シーンや時代の一気の跳躍なんかは、なかなか面白い」
「アニメならでは、ですね」
「実写でも、やろうと思えばやれる。ただし舞台は戦国、幕末、第二次大戦に宇宙と、あらゆる時代にわたるから、実写だととてつもない予算を要するだろうけれどね。それができずにチープになる危険性もある」
アニメの強みを生かした作品、といったところですか」
「起用されている声優も、ちょっとクドめの、アニメらしい演技だったんじゃないかな。あと、キャラクターの動きもアニメらしいといえる。『スチームボーイ』(大友克洋監督)でも触れたけれど、ナチュラルな動きを重視するあまり、逆にノロっとしてしまってる」
「色使いも、特徴的で、アニメらしさがありました」
「特に、終戦後の焼け野原の上に広がる青空ね。もちろん当時のことなんか知らないけれど、あの空の“濃さ”には切なさが漂ってるよね。このシーンをはじめとして背景美術は素晴らしかった」

「いっぽう画面レイアウトは、邦画っぽいイメージでした」
「微妙に間延びしている感じも邦画っぽいね。でも、この作品じたい、昔の映画の各場面を追体験するという構造だから、理にかなってるんじゃないかな。それも、恋愛劇、時代劇、怪獣映画、SF大作と50~70年代の邦画の歴史をなぞるようになっていて、この部分も面白いと思うよ」
「音楽も邦画っぽいというか……」
「打ち込みが耳障りで、安っぽい。せっかく時代を行き来して、そこそこスケールの大きな話なのにね」

「まとめれば、面白いけれど楽しめなかった、という感じですか」
「個人的にはね。『八百比丘尼』を知らない人なら、十分に楽しめるんじゃないかな。でも、星野之宣にインスパイアされて作った話ですとクレジットしてくれれば、と思う。ああ、いっそのことさ、女優にインタビューするんじゃなくて、こうすればどうかな。
 若いカップルがたまたま老婆を助けて、病院に担ぎ込む。そうしたら、その老婆はカップルと医者に『死ねると思ったのに』と毒づいて、なんだか大昔の話を始める。それを聞いた医者は、彼女が伝説の女優で、主演作のストーリーを話しているんだと気づく。どうやら現実と空想とが交じり合っているようだけれど、ボケたとは思えない……。これをハリウッドで、実写でやる。金かけて。オスカーを狙える可能性もあるよ」

「それくらい、ストーリーや構造は魅力的ということですよね」

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