穴/HOLES
監督:アンドリュー・デイヴィス
出演:シア・ラブーフ/クレオ・トーマス/シガニー・ウィーヴァー/ジョン・ボイト/ティム・ブレイク・ネルソン/パトリシア・アークエット/ヘンリー・ウィンクラー
30点満点中19点=監4/話5/出4/芸3/技3
【イェルナッツ家の呪いが解かれる日は来るのか?】
スタンリー・イェルナッツ4世。大層な名前だけれど、父の3世は消臭剤の発明に懸命で、家は貧乏。祖父の2世によれば、1世が魔女との約束を果たさなかったせいで、イェルナッツ家は呪われているらしい。4世も無実の罪で少年更生施設のグリーンレイクへと送られる。そこは、レイクとは名ばかりの荒野。集められた少年たちに与えられる仕事は、来る日も来る日も穴を掘ること。その作業には、所長の過去が大きく関わっていた……。
(2003年 アメリカ)
【ミステリアスな要素が収束していく面白さ】
「実はこれ『インファナル・アフェア III』の直後に観たんですよね。何を観ても、あの面白さにはかなわないと感じてしまうタイミングなのに……」
「思いのほか楽しくて、よくできた映画だったな。これが日本劇場未公開とは信じられないくらい」
「出演者も意外と豪華なんですよね」
「豪華なだけじゃなく、それぞれの役にピッタリのキャスティングだよ。特に印象的なのが、更生施設の監視人を演じたジョン・ボイト。あのブッ飛び具合は、まさに怪演。目がイっちゃてるもんね。シガニー・ウィーヴァーも強い女より、こういう“ヤな女”のほうがハマってる。パトリシア・アークェットもカッコいい。子供たちも、4世やゼロは可愛いし、X線やワキの下たちも『いるいる』という感じ」
「監督も、それなりにネームバリューのある人です」
「代表作の『逃亡者』と、演出は似ていたね。時おりスローモーションを挟んで“ジュワンンン”とか思わせぶりな音を入れたり、スパっとシーンを切り替えたり、ファミリー向けアドベンチャーなのにクライム・サスペンスのノリ。でも、作品の内容とマッチしている」
「その内容ですが、うまく作られている話でしたね」
「うん。イェルナッツ家の呪い、グリーンレイクの伝説、ひたすら掘ることになる穴。ミステリアスな要素をたっぷり含みながら、ニヤリとさせるところもふんだんに盛り込んである」
「原作が読みたくなります。作者みずからが脚本化したというのも、まとまりの良さを生んだ要因なんでしょう」
「ゼロの過去、4世がゼロに文字の読み書きを教えること、雨の降らない荒野、給水車による水の配給、4世が着せられた濡れ衣……と、小さなエピソードがクライマックスへ向けて見事に収束していく。しかも『あ、そうだったのか』と驚かせながら。鮮やかな構成だよね」
「単に、謎解きが魅力なだけではないお話ようにも思いました」
「子供たちが生き生きとしているんだよ。更生施設の日常というか、不良少年たちがイガミあったり、認めあったり。仕切りたがるヤツもいれば、心を開かないのもいる。そんなに深いところまで描くわけじゃないんだけれど、観ている側を“その場”にいるような気にさせてくれるには十分で、だから感情移入も進むし、ストーリーにノっていけるんだよね」
「ただ、安っぽさもあるように思いました」
「予算は限られていたのかも、撮影にも時間をかけられなかったのかも、という気はする。ホコリっぽさとか汗臭さ、水のありがたさは感じられるんだけれど、もう少し“暑さ”も出ていればなぁと思わせたり。クライマックスの“神の指”登りも、ハラハラはさせるけれど、予算があればもっとスリリングにできただろうし。荒野に続く穴、穴、穴……といったCG・合成も頑張ってはいるんだけれど、毒トカゲが走るシーンはちょっとチープだしね」
「音楽も、少々やかましいというか」
「いろんな曲を入れて、サウンドトラックを『売りたい』的な感じだったね。でも全体として、きっちりと最後まで、ハラハラニヤニヤしながら観ることはできるし面白い映画であることは間違いない。ファミリー向けというより、児童文学が好きな大人向けじゃないかな」
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