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2005/07/06

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:マット・デイモン/ロビン・ウィリアムズ/ベン・アフレック/ステラン・スカルスガルド/ミニー・ドライヴァー
30点満点中16点=監4/話3/出3/芸3/技3

【天才青年と精神分析医の出会い】
 MITで清掃員の仕事をしているウィルは、友人チャッキーらとつるんでケンカと酒の毎日を過ごしていた。が、数学の難問をスラスラと解いてしまう彼の才能に気づいたランボー教授は、精神分析医のショーンとウィルとを引き合わせる。幼い頃に負った心の傷が原因で人への信頼を失ってしまった天才青年と、妻を亡くして以来失意の中に暮らす精神科医の出会いは、やがてそれぞれにとって大きな意味を持つものとなっていく。
(1997年 アメリカ)

【人と人との『関係』や影響を与え合う『瞬間』が足りない】
 運命の出逢いは、意外と、そこいらに転がっているものだ。ひと目で「ビビビ」と来ちゃうことなんて、毎日のようにある。ふだん聴く音楽、好きな映画、愛読書、追っかけ続ける馬……。みんなキッカケは「ビビビ」だったりする。
 でも、結婚相手はそうじゃなかったぞ。知りあって、時間が経つに連れて少しずつ自分の中に溶け込んできた。ひょっとすると本当の運命なんて、それと気づくまでに時間がかかるものなのかも知れない。

 本作は、ショーンとの語らいを通じてウィルが立ち直っていく様を描いているわけだが、その過程では、強烈に印象的なセリフやカットがあるわけではなく、ゆっくりと、じわりと、ウィルは心を開いていくことになる。
 ショーンは真摯にウィルと向き合うというより「自分が妻をどう思っていたか、妻との日々がどんな意味を持っていたのか」について徹底して語る。まずショーンが、自分自身と向き合うことから始め、その生き様にウィルが感化され、誰のために、何のために生きるべきかを考え始める、そんな出会いに思える。ショーン役のロビン・ウィリアムスは、日頃の弾けっぷりを抑えて好演している(それでも、オスカーを受賞するほどではないと思うが)といえるだろう。

 つまりそこに「ビビビ」はない。ウィルにとってショーンが、そしてもうひとりの重要人物=スカイラーが「いままで出会ったことのない存在」であることは、まったくといっていいほど伝わってこない。お互いが時間をかけて理解しあっていくことだけが、ふんわりと描かれる。
 それは、リアルといえばリアルなのかも知れないが、観ている側にも「ビビビがない」=映画的な感動が薄いことも確かだ。
 この2人に比べ、「存在の重要性」を感じさせるのがランボー教授。難問を解いてハイタッチをするウィルとランボー、それを複雑な表情で見ている(教授ってば、僕にはあんな表情を見せたことなんてないのに)教授の助手トムという、実に印象的なシーンも用意されている。
 ベン・アフレックのチャッキーも美味しい役どころ。急に「もし10年後もお前がここでこうしていたら、俺がブっ殺してやる」なんて、ショーンが何十分語るよりもはるかに胸に響くセリフじゃないか。
 このように、ランボーとチャッキーが短い出番の割にキャラクターが立っているので、余計にショーンやスカイラーの描き込みが物足りなく思えてしまうのだ。

 短い出番の割にキャラクターが立っているといえば、ウィルの悪友のひとり、モーガン(だったはず)もそうだ。どこにでもいそうな、頭のあまり良くない、ちょっとしたことで犯罪に手を染めてしまいそうなオニーチャン。ラストシーンで彼が見せた行動だけで、彼が何年間も心に思い描いていたことや、その陰にあるウィルとチャッキーとの結びつきの強さが鮮やかに描き出されて、この映画の中の隠れた名シーンとなっている。

 このシーンをはじめとして、全体をナチュラルな空気が包み、誰かのために何かをしようとする登場人物それぞれの優しさも感じ取ることができて、そう悪い映画ではない、と思う。
 だが「ナチュラル」というのは、裏を返せば「これといって尖ったところのない画面構成と大きな盛り上がりに欠ける展開」とイコール。人と人との関係や、その関係によって互いに与え合う影響なども描写不足に思える。
 つまり映画的な感動は薄いのだが、でも、そのナチュラルさ、なにげないセリフや行動の中に物事の本質を潜ませた“ふんわり”さ加減こそが、本作が評価された要因なのだろう。

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