« 幸せになるためのイタリア語講座 | トップページ | 宇宙戦争(スピルバーグ版) »

2005/07/01

宇宙戦争(ハスキン版)

監督:バイロン・ハスキン
出演:ジーン・バリー/アン・ロビンソン
30点満点中16点=監4/話2/出3/芸4/技3

【宇宙より飛来した謎のマシーン、地球を一斉攻撃!】
 世界各地に降り注ぐ隕石。天文学と原子物理学が専門のフォレスター教授はクレーターの小ささなどからただの隕石ではないと判断する。その指摘通り、隕石の中から現れたマシーンが人類に対して一斉攻撃を開始。地球の兵器ではマシーンにダメージを与えられず、最後の手段・核も跳ね返される。シルビアとともに飛行機で脱出を図ったフォレスターは敵の近くに不時着、偶然手にしたマシーンの一部から弱点を探れないかと思い立つのだが……。
(1953年 アメリカ)

【古さはあるものの、ストレートなエンターテインメント】
 70年代以前のSFとミステリーには、ベニヤとトタンの匂いがする。
 地方の衛星都市にある小学校は、第二次ベビーブームで生まれた世代がドっと押し寄せたことでパンク状態。図書室は急造のプレハブ校舎へと移されることとなる。薄暗くてホコリっぽい空気の中で読み漁ったのが、『SFこども図書館』やポプラ社から出ていたルパン&ホームズだった。
 ウェルズの『宇宙戦争』を読んだのも、その頃だったろう。数年後にはビデオで映画を鑑賞。いわばこの作品は、単に古いアイディアの古い映画ではなく、SFの原体験に近いものといえる。

 スピルバーグ版観賞に先立ち、いまいちど観てみよう。

 ナレーションに始まり、ナレーションに終わる本作。そのため「語りすぎている」という印象を与えるが、やりたかったことは明確。そのナレーションとナレーションの間をたっぷりと、スリリングに、リアルに描くことだ。
 大人気となった小説を原作としており、大多数の人が「宇宙人を撃退したのは○○○○○だった」と知ったうえで観る(観た)作品のはず。そこで求められるのは、問題解決のカタルシス(オチ)ではない。発端、展開、終局へ向けての盛り上がりといった流れの良さと妥当性、人類が破滅の危機に瀕する際のリアリティだろう。
 その点については、十分に及第点をクリアしている。

 全体的な構成・展開は、かなり真っ当だ。
 まず、カードに興じるふたりの男。ひとりが隕石落下を報告する電話の後ろでもうひとりが相棒の手を覗き見ているのがいい。続いて「隕石目当ての見物人が押し寄せて儲けるチャンス」といったノリで、導入部を牧歌的に仕上げてある。
 そして、最初の犠牲者、物語に彩りを添えるラブ・ロマンス、徐々に本性を現す侵略者、人類との大攻防戦、核の使用に踏み切る前後の緊迫感、パニックに陥る民衆……と、緩急を駆使しながら澱みなくストーリーが進んでいく。新兵器の登場といったムチャぶりや意外性を配し、ストレートに突き進んだのがいい。

 キャラクターの配置にも好印象を覚える。マッチョすぎない科学者と、でしゃばらないヒロインを主軸に据えて、牧師、軍人など必要な人材を適度に散らしてある。ここに政治家、家族、狂言回しの金持ちなどを加えても面白いだろうが、本作の場合、無理に風呂敷を広げず、話の幅を限定したことがテンポの良さにつながっているといえる。
 シーンの転換も小気味良く、たとえば「軍隊に連絡したほうがいい」といったセリフの直後に軍用車両の行進シーンへポンと飛ぶ。下手な作り手なら隕石が人工物であることを政府や軍に説明するシーンなどを入れたがるところを、そうした間延びを避ける配慮が嬉しい。
 また1シーンごとの完成度もなかなかのもの。何か事が起こった後の驚いた顔、あるいは考え込む姿など「当然そこに挿し入れるべきだろう」というカットがキチンと入れ込まれるし、マシーンを包囲する軍隊が最初に攻撃されるシーンでは、光った、隠れた、車両が燃えた、中継アナウンサーが持つマイクのコードも切れた、と、マシーンの破壊力と軍隊の無力さを実に軽快に描き切る。教授とシルビアが抱き合って終局を待つカットなど『ディープ・インパクト』(ミミ・レダー監督)あたりの終末モノに影響を与えたのだろうなと思わせる部分もある。
 デザインワークも見どころだ。何とも形容しがたいグリーンとレッド、そして曲線が印象的なマシーンは、そのジリジリユラリとした動きともあいまって、スピーディに飛ぶ戦闘機の何倍もの恐怖を運ぶ。

 もちろん、隕石落下地点に科学者が居合わせたり、墜落したプロペラ機から無傷で這い出てきたり、あれだけ手ごわい異星人からマシーンのパーツを簡単に奪ったりと“都合のよさ”は見受けられる。また、いま観れば科学考証に誤りや甘さはあるだろうし、撮影技術的にも、セットくささ・合成くささが気になったりもする(何しろ50年代の作品だし)。
 そのあたりを除けば、ストレートなエンターテインメントに徹していて、飽きずに観ることができる良質な映画。
 ベニヤ板とトタン屋根に囲まれて想像力を育んだ僕らにとって、観賞マストの侵略パニックものである。

|

« 幸せになるためのイタリア語講座 | トップページ | 宇宙戦争(スピルバーグ版) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42478/4781020

この記事へのトラックバック一覧です: 宇宙戦争(ハスキン版):

« 幸せになるためのイタリア語講座 | トップページ | 宇宙戦争(スピルバーグ版) »