プリティ・プリンセス
監督:ゲイリー・マーシャル
出演:アン・ハサウェイ/ジュリー・アンドリュース/ヘクター・エリゾンド/キャロライン・グッドオール/ヘザー・マタラッツォ/ロバート・シュワルツマン
30点満点中14点=監2/話2/出4/芸3/技3
【平凡な女子高生が、ある日突然プリンセスに!】
サンフランシスコの街、画家の母親とふたりで暮らすミア。目立たないことを好み、メガネにボサボサ頭、スピーチでは緊張して吐いてしまうくらい気が弱い。ところがある日、ヨーロッパの小国ジェノヴィアに住む祖母グロリアがやって来て衝撃の告白。グロリアは女王であり、孫であるミアは正当な王位継承者だというのだ。いやいやながらプリンセス修行を始めるミアだったが、マスコミに追い回されるなど散々な目に遭い……。
(2001年 アメリカ)
【おとぎ話になり切れなかった、中途半端なコメディ】
なまじっか『プリティ・ウーマン』がヒットしたばかりに、なんでもかんでも“プリティ”にされてしまう可哀想な監督。「あの『プリティ・ウーマン』のスタッフが贈る」なんてノリだ。
それはともかく、このレベルの映画をヒットさせたり続編を作らせたりしちゃいけないと思う(PART2を作りやすい内容だけど)。
必要なコトは、丁寧に盛り込まれている。授業中のスピーチで吐いてしまうシーンでは「あ、これはフリ。最後はプリンセスとしての堂々としたスピーチを入れるつもりだな」と思わせて実際その通りになるし、親友のリリーや、その兄でミアを見守るマイケル、淡い片思いと裏切り、クラスメイトとのいざこざ、プリンセス修行での失敗などなど、テーマから考えると不可欠な要素がキッチリと用意されている。
また緊張した際にミアが見せる「背中に腕を回して髪の先を触る」という仕草は、ライトな感覚の映画ながらキャラクターに“ふくらみ”を持たせようとする試みに思えるし、ミアの動きのアクセントとしても印象に残って面白い。
が、どうにもハジケないのだ。
おとぎ話である。マスコミに追い回されて苦労しているかと思えばリリーと街角で誰にも見咎められず喋っていたり、ネコのおかげで父親からの手紙を見つけるなど、リアリティは薄いのだから。
ところが、ファンタジーにもなり切れていない。フツーに撮ってしまっているのだ。たとえば、髪を梳き化粧もしたミアの変身ぶりとか、夢にまで見た大好きな男性とのキスとか、本来印象に残るはずのシーンに「さぁ盛り上がるところですよー」という工夫がなく、他のシーンと差のないフツーの場面になっちゃってる。
また、リリーやマイケル、ミアのSPを務めるジョーなど、いくらでも面白く使えそうなキャラクターを配しているくせに、それらの存在を生かし切っていない。彼らもまた、フツーの人になっちゃっている。
サウンドトラックも少なめで、全体のテンポもコメディの割にまったりとしていて、華やかさがない。
幸いアン・ハサウェイはキュートなうえに表情の作りかたも上手く、ジュリー・アンドリュースもさすがの貫禄で、この主演ふたりのキャスティングがベスト・マッチングであるため、それなりに“見られる”作品となっている。が、映画ならではの面白さ、コメディならではのテンポの良さが感じられず、“楽しさ”の薄い作品である。
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