『宇宙戦争』余談
■■多少ネタバレにつながる表現を含みます■■
「いくつかブログ記事を読みましたが、賛否両論真っ二つですね」
「否定的意見には、どんなものがあるんだ?」
「まずは都合が良すぎるという点。主人公たちがなかなか死なない」
「別におかしくない。『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン監督)のローズもあの状況下で生き残ってるじゃん。たまたま生き残った人を主人公にしているだけだろ」
「無理やりな言い訳ですねぇ。それと、これは私も不思議に思ったんですが、あれだけ混乱した状況で『大阪では2機倒した』ってアメリカまで伝わるものなんですか?」
「デマだろ、たぶん。生き残る希望をつなごうってことで、アメリカのどこかのコミュニティが流し始めたデマなんだよ」
「あとは宇宙人のデザインですね」
「あー、あれはね。あんなもんだよ。ていうか、どんなデザインにしても、どっかから否定的意見は出るだろ」
「もちろん、斬新なデザインでびっくりさせてくれたほうが良かったのは確かですよね」
「そりゃあそうだけれど『E.T.』とか『ジュラシックパーク』とか、自分の過去の作品の名シーンを盛り込みたいっていう意図がスピルバーグにはあったんだろうね。だったらE.T.とか恐竜を想起させるアレでもOKなんじゃないか。少なくとも、そこそこ知能はあって残忍そうだけれど不死身ではないっていう雰囲気はあったから、内容にはマッチしてたと思うぞ」
「邦題の『宇宙戦争』にも違和感を覚える人が多いようです」
「このタイトル以外にないと思うんだけれどなぁ。原作がウェルズの小説であり、リメイクであるってことがハッキリわかって誠実じゃん。旅愁・懐古の雰囲気も出ているし」
「パニックムービーとしては面白いけれど人間描写は浅い、人間vs異星人の対決が少ないという意見も多いようです」
「奥行きが不足している点は認めるけれど、感想に書いた通り『テンパってとにかく逃げることしか頭にない状態』だと考えれば納得できる。そういう状態で親子の絆だの何だのを細かく描くほうが不自然だろう」
「でもビリーが急に戦いたいといいだす動機は、ちゃんと前半で伏線として示しておくべきだったんじゃありませんか?」
「それについては、軍隊が脇役で人間vs異星人の対決が少ないってのと微妙に関わっているように思う」
「といいますと?」
「うちのベランダからはさ、かなり遠くまで見渡せるじゃん。この景色の中にトライポッドがいたら……と考えたんだよ」
「ソッコーで逃げます」
「そりゃ逃げなきゃとは思うけれど、と同時に、最後まで見届けたいとも思う。なにしろ一生に一度の大スペクタクルだもん。ましてやあのシーン、軍隊は必死に攻撃しているけれどトライポッドは丘の向こうにいて見えないだろ。人間の抵抗がどの程度通じるのか確認したいって思っちゃうよ」
「いや、でもやっぱり逃げるでしょう」
「少なくともアニメで育ったオレとかビリーは『ひょっとしたら何とか勝てるかも』とか『どっかに弱点はあるはず、そこを突けば……』とか考えちゃう。根拠とか脈絡とかナシでね」
「そして、もっとも問題視されているオチについて」
「もういい、わかった。みんながオチを知ったうえで観ていると思い込んでいたオレが悪かった。だからみんなで『インデペンデンス・デイ』(ローランド・エメリッヒ監督)をありがたがろう。ビバ、ID4!」
「そんな、なげやりな」
「いや、もうクドクドいわない。いうと日本の教育問題にまで発展しちゃうもん。ただ『宇宙人、頭悪すぎ』という、いわれのない誹謗中傷には『おまいら、星野之宣を読め!』と反論しておきたい。どんなに用意周到であっても、異星には行ってみなくちゃわからないことって山ほどあるもんなんだよ、たぶん」
「ほかに印象に残った感想はありましたか?」
「意外とみんな、モーガン・フリーマンに気付いていないんだな。ま、オレも上映中には気付かなかったけど」
「エンドクレジットには、しっかり名前がありましたよね」
「あと漫画家・森田崇氏の『ザンボット3』発言には笑った。そこまでブっ飛べば確実に『ID4』ファンを喜ばせることのできるバカ映画になっただろうな。あと『大阪人銀河系最強』とか『岸和田市民大活躍』とか」
「テレビ朝日にセーラームーンと、明らかに日本のファン向けと思われるサービスが盛られていた映画ですね」
「特に『大阪では2機倒した』ってさ、ネタになるじゃん」
「確実にどこかで『大阪人がトライポッドを撃退した方法を考えるスレ』とか立っているでしょうね」
「あとさ、あのトライポッド1機で何人くらい殺せると思う?」
「攻撃力から考えて1分間に100人は確実でしょう」
「1時間に6000人か。1日に15時間働いて、地球時間で1週間殺戮が続けられるとすると……」
「60万人以上殺せる計算になりますね」
「地球の人口が約60億だから、1万機のトライポッド+1万人の宇宙人で地球は掃討できるわけだな」
「かなりの数ですね」
「とんでもない。在日米軍だけでも4万人いるんだぞ。米軍すべてあわせれば140万人だ。つまり、せいぜい1個師団なんだよ、地球に来た宇宙人って」
「地球以外にも100個くらいの星が同じような目に遭っている可能性がありそうですね。そうすると、星ごとにオチのパターンも考えられそうです」
「そういうネタ遊びができるという点でも、良作だと思うなぁ」
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