コンフィデンス
監督:ジェームズ・フォーリー
出演:エドワード・バーンズ/レイチェル・ワイズ/ダスティン・ホフマン/アンディ・ガルシア/ポール・ジアマッティ/ブライアン・ヴァン・
ホルト/フランキー・G
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【騙すのは誰? 騙されるのは誰?】
ジェイクたち詐欺師のグループは、大金を騙し取ることに成功。だがその金はロスの裏社会を牛耳るキングのものだった。
仲間のアルが撃ち殺され、身の危険を感じたジェイクはキングに取引を持ちかける。「別の誰かから金を騙し取り、それを折半しよう」と。
キングが指名した標的は、マフィアともつながりを持つ銀行家のモーガン・プライス。早速ジェイクたちは仕事に取り掛かるが、
ジェイクを追い回す特別捜査官ビュターンが現れて……。
(2003年 アメリカ)
【頑張ってはいるが、上出来の域には達せず】
ダマシ系映画の主人公が詐欺師である場合、“騙す”必然性が生まれる代わりに「どうせドンデン返しがあるんだろ」と身構えてもしまうから、
どれだけヒネった内容でも意外性は薄れてしまう。主人公が詐欺師でないとき以上に、鮮やかな展開と演出とが求められるといえるだろう。
本作は、ギリギリ及第点といったところか。
ストーリーは、このジャンルの最高傑作『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)をかなり意識したというか、
模倣したうえでどう味付けするかに挑んだかのような内容だ。
盗んだカネの持ち主が裏社会の大物だったという設定や、その大物に取引を持ちかけ、主人公を追い回す捜査官が登場し、という展開は完全に
『スティング』。が、大物にライバルがいたり、キングの手下のルーパスや特別捜査官ビュターンら周辺キャラクターが意外な働きを見せたり、
事件のカギを握る女性リリーを用意したりなど、一応の味付けを効かせてある。
いままさに殺されようとしている主人公ジェイクによる「なぜそんな事態となったのかを語る回想」でお話が進むという構成が、
緊迫感を盛り上げるのに貢献している。ワイプを多用して過去と現在、出来事と出来事とをつないで見た目のテンポもいい。
望遠レンズでジェイクたちを捉え、わざとカメラ前に人を横切らせたりして、秘密めいた雰囲気を醸し出したりもする。
ネオンサインの明かりを生かして作り出した淫靡な画面もまた、作品のイメージに合致している。
音楽や美術には『スティング』ほどのセンスを感じないが、演出や画面作りは、『スティング』と同様、だが『スティング』とは違った方向で
“スタイリッシュ”を追い求めたような感じだ。
オチは「してやられた」というほどではないものの、それなりに意外性はある。いくつかの重要なトリックを、
いきなりクライマックスで披露するのではなく、
ちゃんと伏線として序盤から中盤にかけて用意してある点には誠実さも感じる。
全体として、『スティング』と比較されやすい内容となっている割にはまぁまぁ頑張っているといえるのではないだろうか。
が、上出来の域には達していないのもまた事実。
まず、詐欺のターゲットとなる銀行員の選びかたやダマシのテクニックなどが、強引とか都合がよすぎるとはいわないまでも、少々乱暴だ。
その程度のことで騙されていいの? 騙されやすいヤツだと納得させる描写が足りないんじゃないの? などと思わせるのだ。
また、シーン単位/カット単位のテンポの良さと比べて、全体として見た場合には、
ストーリーの中心となる詐欺に取り掛かるまでに時間がかかりすぎているようにも思える。
キャスティングとキャラクター設定にも、やや難がある。作品規模の割に意外なほど豪華で、特にキング役のダスティン・ ホフマンはペチャクチャとよく喋り、作品内でガッチリとした存在感を示す。が、ジェイク役エドワード・ バーンズの硬い台詞回しは凄腕の詐欺師には思えず、逆にリリー役のレイチェル・ワイズは“いかにも”すぎる。 詐欺のターゲットとなるモーガン・プライスの扱いはぞんざいで中途半端だ。
随所に頑張りは見られるし誠実さも感じる。『スティング』に真っ向から勝負を挑んだことも評価したい。が、
鮮やかさや突き抜けた部分はなく、観て大損はしないけれど、別に観なくてもいい、
それくらいの仕上がりの作品にとどまっているのが残念だ。
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