ぼくセザール 10歳半 1m39cm
監督:リシャール・ベリ
出演:ジュール・シトリュク/ジョセフィーヌ・ベリ/マボ・クヤテ/マリア・デ・メディロス/ジャン=フィリップ・エコフェ/アンナ・カリーナ
吹替:神木隆之介/美山加恋
30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3
【少年セザールの、ちょっとした冒険】
ぼくはセザール。甘いものが大好きで、ちょっぴり太り気味。取り柄といえば詩の暗唱くらいだけれど、それはクラスメイトのサラにいいところを見せたいからなんだ。パパが警察に捕まったり、いとこのお姉さんたちが腰をクネクネさせて踊っているのを見てヘンな気分になったり、ドキドキだらけの毎日。ある週末、ぼくと仲良しのモルガン、それにサラは電車に飛び乗った。3人で、イギリスにいるというモルガンのパパを探しに行くんだ。
(2003年 フランス)
【子供たちと、その“時”を楽しむ映画】
セザールの日本語吹替えは神木くん。ついつい吹替えで見ちゃうじゃんかよ……。
主として捉えられるのは、セザール、サラ、モルガン、3人の子供たちの表情だ。笑顔、ふくれっ面、怯え、疑問、それぞれが実に生き生きとしていて、まさしく等身大。少年少女の“生”を記録するために存在する映画といっていいだろう。
子供らしいコロコロとしたテンポのよさも味わえる。もう少し叙情的に流れるのかと思っていたが、ロックやポップスのリズムで軽快に物語は進む。セザールがプールに突き落とされるカットでカメラがパっと一人称視点に切り替わるなど画面の作りも工夫に富んでいて飽きさせない。色合いにもヨーロッパらしいカラフルさがある。
子供たちの演技も上手い。
特にサラ役のジョセフィーヌ・ベリ(監督の実娘/1992年生まれだから、撮影当時は10歳前後)の10年後が楽しみになる美しさは、それだけで作品を楽しいものにしてくれる。すでにjosephineberry.comが存在するくらいで、ロリ心をくすぐる素材としては、アンナ・パキン、ナタリー・ポートマン、エマ・ワトソンあたりと互角か、それ以上。母親は女優のジェシカ・フォルドで『ダブルチーム』(ツイ・ハーク監督)などに出演している模様。もちろん美女。ますますジョセフィーヌの将来が楽しみだ。
内容的には、ちょっと甘めというか、あやふや。いや展開・構成的にはちゃんとストーリー映画になっているし、大人の都合に振り回される存在としての子供もよく描けている。
が、なぜセザールとサラが惹かれあうのかとか、イギリスで再婚していたモルガンのパパとモルガンは本当に上手く行くのかとか、いろいろと疑問は残るし説明不足にも感じる。3人は子供たちだけで冒険をやり遂げたと考えているけれど、実際には偶然に出会ったグロリアという大人の女性がいい人だったおかげだし、子供の“のびのび”の陰には大人の気遣いがあるということも示唆される。
でも、そもそも子供って思考や行動に脈絡のない(子供なりの脈絡はあるが大人には理解しにくい)生き物じゃない? 世の中ってそんなもんじゃない? とも思わせる。それに、出てくる大人たちもみなどこか子供っぽく描かれていて、実は大人と子供の境界線なんてないのではないか? と考えさせるシニカルなところも持っている。
冒険を終えて少しだけ成長したセザールは、自分が何者であるかを自覚し始める。それが『ぼくセザール 10歳半……』というタイトルに込められた意味だ。その、幼いなりの成長が清々しくて、理屈は置いておいて3人が過ごす“時”をいっしょに楽しめばいいじゃん、そう感じさせてくれる。
ひとことでいえば、可愛らしい映画である。
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投稿: BC7管理人 | 2005/08/12 21:02