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2005/08/07

妖怪大戦争

監督:三池崇史
出演:神木隆之介/宮迫博之/豊川悦司/栗山千明/近藤正臣/高橋真唯/阿部サダヲ/岡村隆史/田口浩正/忌野清志郎/竹中直人/成海璃子/南果歩/菅原文太

30点満点中19点=監4/話3/出5/芸3/技4

【救世主に選ばれた少年が、魔人に立ち向かう】
 村祭りで“麒麟送子”に選ばれ、大天狗の穴から聖剣を取って来る使命を与えられた弱虫タダシ。あまりの怖さに逃げ帰るが、タダシ以外には姿の見えない不思議な生き物スネコスリと仲良くなる。その頃、怨念の魔人・加藤保憲が復活、妖女アギが捉えた妖怪たちを、人間に捨てられたモノと融合させて“機怪”に仕立て上げ、この世に破滅をもたらそうとしていた。妖怪の猩猩、川姫、河童らは、タダシを恃んで加藤に対抗しようとする。
(2005年 日本)

【実はとてつもなく悲観的で、人を試す映画、なのかも……】
 大人、という言葉には、責任とか義務とか、借金とか分別とか、いろいろなものが詰め込まれている。たった5画の言葉なのに、あふれるほどの意味が内在している。
 たぶん、子どもから大人になることで何かを失うわけじゃない。その逆、いろいろなものを身につけて、その複雑性の陰に隠れてしまって、本当は自分の中に持っている輝きが見えなくなっているだけの話。そう思いたい。ひょっとすると、おじいちゃんになれば心の中もスッキリして、それまで隠れていた輝きがまた見えるようになるのかも知れない。
 少なくともタダシは、誰も経験し得ない冒険を介して、どんな複雑さの中にあっても見失うことのない輝きを心に刻み込むことだろう。その冒険に随行することで、自分自身の中にある輝きを思い出すことにしよう。

 ところが、そんなささやかな願いは木っ端微塵に打ち砕かれる。
 復讐が人間だけの専売特許であること、その復讐こそが純粋な輝きであることを思い知らされて、少々ヘコむ。冒険活劇だの少年の成長物語だの妖怪うじゃうじゃで楽しいよだの、さんざん釣っておいて突き放す、なんともイジワルな映画だ。

 あるいは、単に神木くん目当てで劇場に足を運んだ腐女子も多かろう(他人のことは言えないけど)。ガキに埋め尽くされた夏休みの映画館ほど居心地の悪いものはないが、そこはそれ、心の広いお兄さんお姉さんを装って、上映中のガサゴソや泣き声はガマン。「これ(加藤保憲)誰?」とか「あれがスネコスリ?」などと両親に尋ねる声も、微笑ましく聞き流す(それでも隣に座ったガキンチョが「お父さん、ヨウカイって何?」といったときにはさすがに「そこからかい!」とツッコミそうになったが)。なにしろ隆くんが大活躍する、初の主演作である。画面に集中。

 そんな思いも、スルリとかわされる。
 いや確かに大活躍である。例によって複雑な家庭環境(両親が離婚していたり夫婦関係が崩壊していたり死んでいたりする役柄が多いのは、そういう境遇の役に求められる“繊細さ”の表現にかけては天下一品だからだ)であるわけだが、その「軽いウジウジっぷり」の演技は難なくクリア。入浴シーンもあるし、お尻の谷間まで披露してくれる。彼の演技力を200パーセント引き立たせるために、級友たちとして用意された子役は学芸会以下のレベルだったりする。祭りのシーンでの「へ?」や大天狗の山での「無理無理無理」「え、え」をはじめとするオタオタぶりには、役者としての才能と可愛らしさを同時にハッキリと感じることもできる。「加藤を、倒す!」の言葉に、こちらもついつい拳を握り締める。間違いなく彼の主演作である。
 が、セリフの大半は「うわー」と「おぉー」。あの伏目がちで微妙で多感な神木くんは、ほとんど観られない。これまで彼が遭遇しなかった冒険譚、しかも主演という位置を得て「新しい神木くんが観られる」とワクワクしていたが、実は「いつもの神木くんも観たかったのに」という罠。
 しかも美味しいところは、お笑い担当・河童の川太郎=阿部サダヲや、美+悲哀担当の川姫=高橋真唯、カッコよさ担当のアギ=栗山千明に持っていかれている印象。
 そして、タダシはヒーローではない。山田さんの送別会について語るタダシに、涙が止まらず、脱力感に覆われて何かを壊したくなる。

 かろうじて納得できるのは「真っ白な嘘をつく」ことが大人への一歩だということ。 自分以外の他者を思いやることから、複雑への道は始まるのだ。

 ま、こうした感想は、ヒネくれて育ち、子どもも持たぬ身ゆえであって、タダシと同年代の子どもやその親たちならば、ボクは輝きを見失わないでおこう、この子を輝きに満ちた人に育てよう、そんな思いを抱けるかも知れない。そういう、ご家族連れ向けエンターテインメントとして仕上げられた、楽しい映画ではある。

 まず、各カットのピタリとした収まりのよさがいい。それらをビシバシとつなぐ編集(1つの動きを2~4カットくらいで見せるなど)で作られたアクションシーンのスピード感とカッコよさも目を引く
 特に妖女アギは、どう映し、どう動かせば日本人離れした栗山千明のプロポーションがもっとも魅力的に見えるか、知り尽くしたような完璧なカット割りで画面に収まる。
 またタダシについては「こんな華奢な子に聖剣を振り回せといっても無理でしょ」というイメージを上手く生かして、「タダシじゃなく剣が戦っている」「重いものを必死に振り回している」という設定・絵作りを試み、戦闘の面白さを増加させている。
 特撮系は、さすがにハリウッドの大作と比べると幼稚だが、この作品にふさわしいニギヤカさはある。サウンドトラックもドーンバーンと派手で、全体として邦画には少ない“切れ味”を感じさせる作りになっている。
 かなり短期間で撮影したらしいが、監督の頭の中には(センスのいい)コンテが完全に出来上がっていて、それを映像化する指示の適確さにも長けている、そういうことを感じさせる仕上がりだ。

 詰め込めるだけのものを余さず詰め込んだ、という印象も強い。笑いはもちろんのこと、親の勝手によって置いてけぼりを食らう子、読書の重要性、老人介護、「もったいない」の意識、いじめ問題、マスコットとしてのスネコスリ、売れない本は休刊になる市場原理とそれを覆す熱意、小学生にとっての初めての「性」の意識、ワイヤーアクションにCGに『帝都大戦』に陰陽道に特殊メイク……。
 役者でないものまで盛んに登場し、記念館と反戦メッセージを盛り込んであからさまなまでに水木しげるへのリスペクトを示して、“悪ふざけ” すらも超えたゴッタ煮の世界が作られる。なんというか、「はいはい、それも入れましょう」という最大限の気配りを監督が示したかのように。
 この混沌の中では、本来なら「どのようにして加藤を倒すか」と興味をそそられるはずのクライマックスも、ネタの1つに過ぎなくなる。伏線は張られているし、意外性を狙ったこともわかるのだが、カタルシスはない。
 麒麟送子? それがどうした! 祭りだ! うわー!

 問題は、このゴッタ煮の中から、何を掴み取れるか。2日かけて、ようやくここまで消化したけれど、まだまだ頭の片隅で「これは、何のために、誰のために作られた映画か」「オレはタダシになりたいのか、タダシになってはいけないと感じているのか」という疑問がぶすぶすと燻ぶり続けている。
 まぁ何も考えずに観てキャハハと楽しむのもいい。娯楽作であることには違いないんだから。でも、なんらかの答えを出さないと、本当に自分の中の輝きが(まだ残されているとして)消えてしまうんじゃないだろうか? そんなふうに感じさせる、観るものを試すかのような作品でもある。だから、イジワルな映画に思えてしまうのだ。

 ●2回目鑑賞後のあがきぶりは、こちら

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