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2005/08/21

恋愛小説

監督:森淳一
出演:玉木宏/小西真奈美/池内博之/神木隆之介/奥貫薫/平山あや

30点満点中18点=監3/話3/出5/芸4/技3

【死神と恐れられた少年。彼を愛した女性】
 大学卒業を間近に控えた法学部の宏行は、ひとりで豪邸に住む同学年の目立たない男・聡史の財産目録と遺言書を作成することになる。聡史の口から語られたのは、彼の不思議な過去。「友人、両親、親戚。僕が親しくした人はみんな死んでしまう。僕は死神なんだ」。いつしか心を閉ざすようになった聡史だが、彼にもただひとり愛した女性がいた。彼女の名は、瑞樹。快活でマイペースで「そんな運命なんて怖くない」と胸を張る女性だった。
(2004年 日本 TV→劇場公開)

【物語よりも空気感を味わえ】
 誰かのために何かをする。手助けのレベルから献身的な奉仕、果ては自己犠牲までありうる、その“何か”は、特別なことのように思えて実は、社会の基本的構成要素である。だからこそドラマチックに描かれると、心臓に近いところで音楽を奏でられたような感動を覚えるのだろう。

 画面に漂う、音楽にも似た空気感が心地良い本作。キャンパス、地下道、夜の街、豪邸、プラネタリウム、病院……といった各舞台で、それぞれの場所にふさわしい空気・色合いと時間がしっとりと流れる。セットに頼らず、大部分をロケで撮影しているように見えるが、それもまた“その場の、そのままの空気感”を醸し出すのに貢献しているはず。ソフト気味のフォーカスもいい。
 音楽(サウンドトラック)そのものも、弦を中心としてモチーフがさまざまにアレンジされ、場面・画面にふさわしいタッチで空気を震わせる。

 そうした空気の中にいる聡史と瑞樹の立ち姿も、波打ち際で、あるいは月の光をバックにして、気持ちよく画面に収まる。おそらくは哀しい結末を迎えるであろう、ふたりの運命を背後に感じさせながら。
 ややカメラが動きすぎる感もあるが、それも、張り詰めた時間の流れを作り出そうという意図の表れ、つまらない作品にしたくないという決意の表れとして受け止められる。ふわっとしたタイミングで引きのショットからアップに切り替わり、人物への寄り添いと物語を俯瞰して眺めることを自在に使い分けて、全編に渡って手間をかけて撮っている印象も受けた。
 WOWWOWが製作、放送後に劇場公開された作品らしい。確かにテレビサイズかも知れないが、単なるコンテンツにとどまらない叙情的な雰囲気を持つ絵作りであり、作品である。

 役者も、思いのほか素晴らしかった。
 玉木宏は、涼しくて弾けることのない聡史という役にハマっている。小西真奈美も、その印象的な眼と唇とを画面に刻んで、キュートな瑞樹の魅力を目一杯に表現する。
 意外だったのは宏行役の池内博之。正直、これまではハネッ返りの若者というイメージが強すぎてどちらかといえば苦手(といっても、ほとんど出演作を見ていないんだけれど)なタイプだったが、本作ではセンテンスごとに抑揚を効かせたセリフまわしや、目、肩のラインなどで演技らしい演技を見せてくれる。ちょっと舞台向きの芝居にも思えるが、細かなところにまで気を配っている感じだ。

 そして、聡史の幼少期を演じた神木くん。もう脱帽。
 序盤の無表情は、いかにも「誰とも親しくならない」と決意した“感情ゼロ”の顔。そこから、降り積もった雪を踏みしめてわずかに5だけ感情が表出し、埋もれたバットを見つけて10になり、そのバットを振り回して20になり、彼の心を開かせようと努力してくれる叔母さんの姿に戸惑いながらも50を出し、遂にはパっと100の笑顔を見せて、最後にはマイナスへと叩き落とされる。
 微妙な心境の変化をほぼ表情だけで演じ切ったこのシークェンスの鮮やかさには身震いしてしまう。

 死神としての運命を跳ね除けるための月光浴シーンが繰り返し印象的に用いられたり、最後に聡史が見つけるものがあまりにストレートで、それがかえって心を揺さぶったりと、ポイントを押さえた作りもステキだ。

 ただ、ストーリー映画として見た場合の甘さは気にかかる。
 まず、オープニングとエンディングは宏行のナレーションなのに、中盤は聡史の独白が大きなウエイトを占めるという構成が、視点の揺らぎにつながってしまっている。あくまでも聴き手・宏行の目線で進めるべきではなかったろうか。
 また、宏行にはせっかく「結構いい加減に生きている」というキャラクターが用意され、恋人・美和と別れたばかりという設定があり、自らを死神と呼ぶ聡史に少しずつ感情移入していく様子も描かれるのだから、ラストへ向けての展開はそれらを生かして「こんな人間でも誰かを救える」とか「オレだって運命に逆らえる」といったことを印象づける作りにして欲しかったところだ。
 登場人物たちを突き放すような終わりかたも解せない。別に、すべてを丸く収めろとか宏行と聡史のその後をしっかりと語れとまではいわないが、現状では、誰が、誰のために何をしたのか、何をしようとしたのか、その中の何を描こうとした映画なのかが曖昧で、「こんなことがありました」的な作品にとどまっている。まぁそのあたりの解釈や決着を観客に委ねようとしたのだろうが、空気感たっぷりの撮りかたともあいまって、あまりにふんわりしすぎの結末になってしまったような気がする。

 そんなわけで、やや消化不良の気配もあるが、登場人物それぞれの優しさが詰め込まれていて、何より神木くんの天才が存分に発揮されていて、爽やかなイメージを残す作品である。

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