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2005/08/15

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監督:片岡K
出演:上戸彩/神木隆之介/中村七之助/田中好子/小島聖/菊川怜

30点満点中15点=監2/話2/出5/芸3/技3

【フツーの女子高生とヘンな小学生のHなバイト!?】
 自分は何者になるのだろう? 思春期特有の悩みを抱え、持ち物を片っ端から捨て、学校もサボるようになった女子高生の野沢朝子は、同じマンションに住む小学生・青木かずよしの誘いでアルバイトを始める。その内容は、風俗店に勤める子持ちの若妻になりすまし、インターネットのチャットで男性たちの相手をする、というもの。日夜続けられる、文字のSEX。いっぽうかずよし君も、新しいお母さんと素直に接することができずにいた。
(2004年 日本)

【映画としては失格だろうが、憎めない配慮も多い】
 すっかり神木くん祭りだな。
 原作は芥川賞作家・綿矢りさのデビュー作にして文藝賞受賞作(未読)。その脚本化にあたって「セリフが軽妙でリズミカル」と評される大森美香を持ってきたのは間違いではなかったか。おたがいの持ち味である“言葉”がぶつかり合って、必要以上に“言葉”が存在を主張する。いや“言葉”というよりも“語り”か。主人公・朝子の独白につぐ独白。リアリティに乏しい会話。文学作品ならともかく、すべてを“語り”で表現するのは映画としてどうだろう?
 ましてや、オープニングで描かれる同じ歩調で歩く高校生たちの後ろ姿に「私たちは同じ歩幅で歩いている」といったナレーションを被せるのは、せっかくの印象的なカット=映像の力を弱めてしまっていて興醒めだ。

 ま、この世代の女の子・男の子特有の内向的で悶々とした日々と成長を描くためには“語り”は有効なのかも知れない。
 また、言葉の氾濫が、かえってテーマを見えにくくさせて、それがジックリと考えさせる効果も呼んで、そういう意味ではアリなのかも知れない。
 が、映像作品らしさも、もっともっと取り入れて「映画にした意味」を感じさせて欲しかったものだ。

 で、映像を観る。
 テンポはいいがそれだけに固執して、良くいえば軽快で感覚的、悪くいえば即物的かつ行き当たりばったりで、その感覚が鈍ると妙に間延びしたところも生まれてしまう編集。安っぽい欧州ラウンジ・ポップス風のサウンドトラックが、セリフや動きの合間にいちいち挟まれる気忙しい作り。ビデオくさい画面。『アットホーム・ダッド』や『魔法戦隊マジレンジャー』でおなじみとなったロケ地(横浜市瀬谷区のマークスプリングス)。必要のない描写(朝子の祖父がパソコンを前に四苦八苦する様子など)……。
 これらをひっくるめて“いかにも深夜のテレビ的な軽さ”とするのは簡単だが、この監督らが「どうすれば安い予算でもファッショナブルな映像に見せられるか」と苦心して編み出した作風だろうから、否定すべきではない。ねちねちとした“語り”が主となった作品なのだから、見た目的にはこれくらいの軽さも必要だろう。
 それに、極端なアップを控えめにしたり、横長のフレームの中にバランスよく背景と人物を配するなど、TVサイズに収まらないよう気を遣っているようにも思える。

 朝子は終始セーラー服姿で通し、時おりエロティックな匂い(スカートの中がチラリと見えたり風俗嬢に扮したり)を漂わせる。これらは彼女を女子高生あるいはオンナとして“記号化”しようとする試みだ。
 でも朝子は、まさに記号=文字という、感情の伝わりにくいツールで世間と交わることの限界を知るし、カネには執着しないし、酔っ払って陽気にもなる。記号だけでは表現できない生身の人間であることもまた、随所にうかがわせる。
 どんなに自分を閉じた存在だと思おうとしても、記号化しようとしても、彼女はやっぱり「悩める女子高生」である前に『野沢朝子』なのだ。
 そんな読みから浮かび上がってくる作品テーマは「誰と、どのようなカタチで交わろうとも、自分は自分でしかありえない」といったところか。つまりは「等身大でいいんじゃない?」ってことだ。

 そんなわけで、悩んだり、はしゃいだり、重かったり、軽かったり、そのすべてがちょっとばかりデフォルメされているけれど、あくまで等身大のティーンを表現する存在としての、主演ふたりを観る。
 テレビでの上戸彩は、軽さというか頭の悪さばかりが前に出ているが、本作ではその軽さを“やや屈折した明るさ”とか“うじうじしているように思えて実は精一杯走っている可愛らしさ”、朝子を体現するのに不可欠な“まだ何者でもない不確かさ”に置き換えていて、いい感じ。演出・カメラも、本来上戸彩が持っている哀しさやフツーっぽさをよく捉えている

 いっぽう、神木くん演ずるかずよしは、朝子が「等身大でいることは、悪くない」と気づくための触媒=ツールとして用意されたキャラクターであるせいか、いつもに比べて段取り通り動いてるなと感じさせる場面が目につく。「誰の心にもエロはある」とかスカトロの解説とか、本人なら口が裂けてもいわないようなセリフが盛りだくさんのムズカシイ役柄でもあるから、かなりの部分で監督のディレクションに頼ったのだろうと推察する。
 逆に、めちゃくちゃ考えているなと思わせるところも、また多い。「生まれ変わりたいの?」と朝子に尋ねる際の微妙な目元・口元とか、パンツからノートを出し入れするときのノタクタした動きなどは、たまらなくラブリー。また、水道からコップに水を汲んだりなど、なんてことはない動作をしながら相手と会話するというのは意外と難しいはずだが(特に本作はセリフそのものも難しいし)、それもサラリとやってのける。

 ケチをつけようと思えばいくらでもつけられるが、“等身大”というテーマを描き切るべく、演出プランニングも主演ふたりも割と頑張っている映画といえそうだ。
 まとめれば「神木くんのアップが少ないだろ、ごるぅああ!」な作品。

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