踊る大捜査線 THE MOVIE2
※正式タイトルは
「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」
監督:本広克行
出演:織田裕二/柳葉敏郎/深津絵里/水野美紀/ユースケ・サンタマリア/真矢みき/筧利夫/高杉亘/いかりや長介/神木隆之介
30点満点中16点=監3/話3/出3/芸3/技4
【お台場完全封鎖! 連続殺人犯を捕らえろ】
東京・お台場で会社役員を狙った連続殺人事件が発生、女性キャリアの沖田が捜査本部長に就く。所轄の湾岸署からも青島、恩田らが捜査に駆り出され、おかげで彼らは婦女暴行犯やスリの一家を取り逃がすことになる。「そんな事件は放って置きなさい」という沖田に怒りを爆発させる青島。本部の室井管理官は所轄の働きに理解を示すが、そんな折、湾岸署の捜査員・柏木が犯人に拉致される。沖田はお台場を完全に封鎖しようとするのだが……。
(2003年 日本)
【リアリティはないが、ファンサービス精神はまずまず】
「神木くんの出番、たったこれだけかよっ!」
「……映画の内容について話してください」
「だって実質2カット、全部あわせても1分にならないぜ」
「はいはい。じゃ、映画について」
「TVシリーズを知らなくても楽しめるとは思うけれど、やっぱりあくまでTVシリーズのファン向け。その徹底ぶりは、ある意味エライ。
下手なキャラクター説明や設定説明は抜き、このシリーズならではのお約束も盛り込んで、観客が『踊る』ワールドを熟知していることが前提となった作りだね。笑いとシリアスをあんばいよく散りばめつつ、官僚vs現場という構図を一貫させているあたりも、TVシリーズ以来の料理法。安心して観ていられる」
「かの有名な『事件は会議室で起きているんじゃない』というセリフも、ファンサービス的にプレイバックされますし」
「それに今回は『お台場をよく知る所轄』という点もテーマになっていて、舞台設定とストーリーが上手く噛み合っていたんじゃないかな」
「でも、このストーリー、甘くありませんか?」
「いや、『お台場を封鎖するのって面白そうじゃない?』という軽い思いつきからスタートしたであろう作品の割には、冒頭の演習シーンに登場するSAT(スペシャル・アサルト・チーム)や、その演習で青島だけが爆弾にひるまなかった秘密、もろもろの事件などが本筋に関わってきたりして、大枠の構成はまずまずだと思う」
「わざわざ『大枠は……』って断るということは、ディテールに難ありということですか?」
「リアリティを持たせようという配慮がない。それが甘さを感じる原因じゃないかな。婦女暴行犯の被害者を男性署員が取り囲んだり、体面を重んじるはずの本部長がいきなりお台場を封鎖するという『失敗したら取り返しのつかない汚点になりうる命令』を発したり、その割に犯人のいる建物を封鎖しようとしなかったり……」
「本店所属のネゴシエーターが所轄の元上司に命令されて外へ飛び出して行くのもヘンですよね。もっとも、リアリティを求めちゃいけない作品なんでしょうけれど」
「うん、“軽さ”というか、細かなところは気にせずに全体的なスピード感と収まりの良さを観てください、ってところかな」
「人物の後ろにゴチャゴチャと群集を配するあたりは、細かなところを気にさせる作りですよね」
「それもファンサービスだろ。いろんなものを詰め込んであるので、何度も観て“仕掛け”を発見する楽しみを味わってください、皆さんもそれを期待しているんでしょ、っていう。なんか『心はロンリー』シリーズ(演出・三宅恵介)に似た作りだと思ったら、どっちも脚本は君塚良一なんだな。『踊る』の原点は、あの作品にあったわけか」
「そのせいか、撮りかたもTVシリーズの延長的に思えました」
「スクリーンサイズは意識していたと思う。意識しすぎてカメラは大仰に動くし、セットくささとか『このタイミングで、ここからここまで動いてセリフをいってください』という演出くささはあるんだけれど、TVより手間をかけてシーン/カットを作っていたのは確か。画面の中の人物の収まりも編集も小気味いいね」
「これだけ多くのキャラクターにそれぞれ見せ場を与えているのも、ファンサービス的ですね」
「まぁ熱狂的なファンからすれば『スリー・アミーゴスの笑いが少ない』とか『室井さん、座ってるだけじゃん』とか不満はあるのかも知れないけど」
「ただ、作品中にオトナがいないというのは、どうなんでしょう?」
「主要登場人物では新城管理官くらいかな、オトナって。でも『オトナになり切れない、なりたくない人たちの熱さ』がテーマなんだから、いいんじゃないか。むしろ、そんな中でオトナでも子供でもない沖田本部長の哀れさが痛々しいよな」
「まったく役に立たない人物でした」
「青島や室井らレギュラー陣を引き立たせるためだけの役どころ。せっかく『女性でも負けちゃいけない』という思いを秘めている人なんだから、その焦りをクローズアップしたりとか、官僚vs官僚という構図を描く材料にしたりとか、沖田本部長についてはもっとふくらませようがあったはず。そうした詰めの甘さも、そのままストーリーの甘さにつながっているんだろうな」
「ファンサービス的なノリは潔いとしても、そういった甘さ、浅さ、軽さが目について、結局『笑の大学』(星護監督)と同様、TV局による“コンテンツ”だと感じるんですけれど」
「でも『笑の大学』より、よっぽど“映画”しているよ。厳密にいえば“TV局制作の映画”かな。チマチマしていないし、かといって風呂敷を広げすぎてもいない。お台場という程よい空間で作品のスケールをまとめたのが、TV局制作の映画としてはちょうど良かったんだろうな」
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